前に紹介した
「霊柩車No.4」の著者の作品です。
松岡さんだと、「千里眼」のシリーズの方が有名みたいなので、このシリーズを読んだ後にそっちも読んだのですが、個人的にはQのシリーズの方が好きかなぁ。
さて、この万能鑑定士Qのシリーズの最大の特徴は
「人が死なないミステリ」です。殺人どころか事故死も自然死も、全編通して一切描写がないです。
それに基本ハッピーエンド。極悪人も登場せず、そういう意味では安心して読める本です。
内容はというと、都内あちこちのガードレール一面に奇妙な力士シールが貼られている理由を調査することになった、角川の週間編集者小笠原悠斗は、
万能鑑定士Qという奇妙なお店を経営する凜田莉子と出会います。彼女は彼に出会った瞬間、持ち物から彼が角川の編集者だと見抜くほどの鑑定眼の持ち主。
小笠原は、彼女なら力士シールの謎を解ける!と確信し、一緒に調査をすることになったのですが…(by1巻&2巻)
このシリーズ、各巻ごとに独立した話ですが、力士シールの話だけ1巻と2巻で前後編みたいな感じになってます。
ただし、この1巻と2巻、話が現在と過去を行き来する割には、登場人物にもまだそれほど肩入れ出来ないし、中盤を過ぎるまではちょっと読みにくいというか何というか…。
個人的には3巻を先に読んで、登場人物に馴染みが出来てから1巻&2巻を読むほうが読み易いかも?
3巻では、落ちぶれた某音楽プロデューサーが、ある野望を企てる話ですが、莉子の能力が最初から最後まで如何なく発揮されて、面白いです。
※というか、この音楽プロデューサーが誰をモデルにしてるのか、読むと一目瞭然wwで、面白いのが、万能鑑定士、凜田莉子のキャラ。
何でもかんでも物の真贋を一瞬で見分ける能力の持ち主で、きっと子供の頃から聡明で、学業優秀だったのだろう…と出会った小笠原も考えるのですが、これが大きな間違い。
彼女は沖縄の波照間島出身ですが、高校までは救いようがないくらいの劣等性。
それが東京に出てきて、ある人物と出会い、自分の「能力」の使い方を勉強していくのです。
1巻と2巻、それから10巻で、その様子が細かく描かれていて、かなり興味深い。
考えてみたら、ものすごい能力のある探偵って、よく出てくるけれど(というか探偵役は大抵そう)、彼ら彼女らの能力がいつからあるのか、どうやって開花したのかを描いている小説ってあまりないような気がする…。
しかも莉子の能力は、まだ発展途中。
若い故に未熟な一面もあり、ちょっとした心の動揺で正しい鑑定が出来なくなる時もあります。
そして9巻では能力の使い方を間違えて、あやうく自身の鑑定眼を失う危機が…!?
もちろんそういう時に助けてくれるのは、相棒の小笠原。※注:恋人ではないwよくある友達以上恋人未満ww彼は莉子のような鑑定眼はないけれど、彼自身が今まで得てきた職業上の知識や経験、度胸、勇気、そして莉子の為に何かしてあげたいという純粋な気持ちが、莉子の支えになり、莉子の能力を救うときもあるのです。
とにかく1冊1冊がそれほど長くなく、さら~っと読めるので、
2時間くらい気軽に読書したいときにちょうどいいです。
読み始めると、12冊あっという間に読めちゃいます♪
ちなみにこのシリーズ、短編集が2冊と、新たにスタートした「万能鑑定士Qの推理劇」が3巻まで出ているので、そちらもどうぞ~。
そうそう、私がこのシリーズを購入しないのは、量が多いので本棚がすぐ一杯になりそうという理由からですw
それから最後に蛇足…。
まあ所詮小説なんで、こういうのは雰囲気ぶち壊しなのは分かっていますが…。
莉子はあらゆるものを鑑定し、その後鑑定の根拠を述べるのですが、たまーに自分の知ってるジャンルが出てくると
「そうだっけ?」「そんな単純じゃないような…」とか、根拠の内容に若干疑問符がつくときがあります。
ということは、他のジャンルについても、きっとあまり鵜呑みにはしないほうがいいのかも…。
莉子があまりにきっぱりと断言するので、つい本気にしちゃいそうなんですけどねw