依頼人メートランドが帰ると、ホームズは話し始めた。
「おそらく彼の推察は当たっているだろう。背後で何かが進行中なんだ」
ワトスンはホームズが既に確信していることに驚く。
そもそも手紙をどうやってロンドンから投函したかも検討つかないのだ。
「そんなの、共犯者がいれば簡単だ。ぼくにもそういう部下がいるし」とホームズ。
ホームズはその後、手紙をポケットに入れると、急いで外出の準備をして、出かけていった。
ワトスンは、牧師館へ電報を送るためだろうと予想したが、実はもう一つ目的があった。
ディオゲネスクラブにいる彼の兄、マイクロフトに相談しに行ったのだ。
もっとも、ワトスンがそのことを知るのは、ずっと後になるのだが。
牧師館からの返信は、すぐに到着し、翌日にでもホルブルック館のグラフトン夫人に会えるよう手手配しておくとのことだった。
駅まで迎えに来たパジェット牧師は、初老で白髪の、研究者のような、非常に内気な男性で、馬車での道中、交わした言葉は、途中通りがかったホルブルック館について教えてくれただけだった。
牧師館に付くと、パジェット夫人と、グラフトン夫人が出迎えてくれた。
グラフトン夫人は分別のありそうな女性だが、ホームズに会うということで若干緊張しているようだ。
ホームズはそんな彼女をリラックスさせるように話しかけた。
「グラフトンさん、ここで話したことは決して口外しません。
我々の目的はメートランド氏の依頼に基づいて、レジナルド卿の健康を調査することです。
さて、ぼくが電報で指示したことをやってくれましたか?」
「はい、行いました。ホームズさん」と、グラフトン夫人は手紙の束を彼に渡した。
ホームズは手紙の消印やら中身やらをチェックすると、夫人に返した。
「同じ消印、同じ新聞の切り抜きを使っている。ぼくの理屈はこれで証明された」
そしてホームズは、グラフトン夫人にアダムズの身元保証人を尋ね、夫人はレジナルド卿の部屋にあった身元保証人からの手紙のあて先のメモを渡した。
アダムズの身元保証人は、ケルモア夫人とチャールズ・キャラウェイ准将だった。
二人は、アダムズについて、人柄も仕事ぶりも、絶賛している手紙を出していたのだ。
その他、グラフトン夫人は、アダムズについての個人的印象を述べた。
アダムズは45才くらいのイケメンで、女性の使用人にもモテているらしい。特徴としては、耳たぶが普通より小さいことくらいか。
ホームズは彼女の観察眼を称賛し、近いうちに館で会うときはお互い初対面でいきましょうと約束して解散した。
さて、いよいよ次回はアダムズと直接対決か!?
●アダムズの消印偽造の手口をあっさり見破るホームズ。自分もやってるならそりゃ分かるわなw
●この話でホームズはマイクロフトに相談に行きますが、マイクロフトに相談するほどの難解な事件には見えない気がするのは私だけか?
●ホームズは
意外と田舎が好きで、パジェット牧師と馬車で牧師館に向かう途中も、何だか楽しそうw実際引退後はサセックスの田舎で悠々自適の老後を過ごしたし。一旦田舎に引っ込んだものの、田舎のつまらなさに嫌気がさしてカボチャに八つ当たりをして(byアクロイド殺し)、結局ロンドンに戻ってきたポワロとは対称的~。
●身元保証人は英語でreferee。レフェリーにそんな意味もあるなんて知らなかったです。普通に調べると審判員。その他仲裁人とか、調停者とか…。何故か
相撲の行司も出てきましたw
●グラフトンさん、レジナルド卿にバレないように手紙を持ち出したり、アダムズの紹介者を調べたりと、かなりやり手。主人だけでなく女性使用人まで懐柔したアダムズも、この夫人だけは懐柔出来なかったのねぇ~。そこが
アダムズの敗因かな。
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