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これまで読んだ本、新しく読んだ本の感想を適当に書いていきます。 ※あくまで個人の感想です!
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目次
50音順になってます

悪意
伊良部一郎シリーズ
噂の女
往復書簡
お江戸でござる
オリンピックの身代金
オレたちバブル入行組
折れた竜骨
顔 FACE
化学探偵Mr.キュリー
仮想儀礼
かばん屋の相続
機長、事件です!
Q&A
救命センター当直日誌
金融探偵

コモリと子守り
櫻子さんの足下には死体が埋まっている
さまよう刃
事故―別冊黒い画集Ⅰ
死体置き場で夕食を
十角館の殺人
しまのないトラ
Sherlock: A Study in Pink
シャーロック・ホームズシリーズ
シャーロック・ホームズ秘宝の研究
小公子セディ
小公女
真珠夫人
新世界より
ずっとあなたが好きでした
ストロボ
世界の終わり、あるいは始まり
ダウントン・アビーに於ける職業指南書
武田信玄(あかね文庫版)
地球進化 46億年の物語
冷たい川が呼ぶ
天璋院篤姫
トッカン 特別国税徴収官
トッカン The 3rd おばけなんてないさ
トッカン vs勤労商工会
猫のなるほど不思議学
パーカー・パインの事件簿
初ものがたり
福家警部補の挨拶
ブードゥー・チャイルド
ホームズの伝記比較
ホームズ・パロディ(J・トムスン)
星新一のショートショート
「本が売れない」というけれど
ぼんくら
マスカレード・ホテル
マンガ版シャーロック・ホームズ
万能鑑定士Qの事件簿のシリーズ
「見たいテレビ」が今日もない
ミッキーマウスの憂鬱
密室殺人ゲーム王手飛車取り
密室の鍵貸します
みんないってしまう
モンスター
夜行観覧車
ラプラスの魔女
霊柩車No.4
ワイルド・スワン
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ストロボ



真保さんといえば、織田裕二主演の映画「ホワイトアウト」や「アマルフィ」などが有名ですが、個人的にはこの人のは短編集の方が好きなんですよね~。
※でもホワイトアウトや奇跡の人なんかは好きだけど…♪

この「ストロボ」は、写真家、喜多川光司の20代~50代までのある時期を切り取って、一章ずつ短編集にしてある小説です。
が、この小説の珍しいところは、若い時から50代までの各章の掲載が逆になっているということ。
具体的に言うと、第五章「遺影」(50歳)→第四章「暗室」(42歳)→第三章「ストロボ」(37歳)→第二章「一瞬」(31歳)→第一章「卒業写真」(22歳)…という風に読み進めるわけです。

で、この喜多川のオッサン、ものすごい女好きで、各章必ず女性絡みの揉め事が…w
それなのに奥さんのことはやっぱり一番愛してて、第五章「遺影」のラストでは、「自分の遺影を撮影してもらいたいのはこの女しかいない」と奥さんに撮影を依頼するという、超都合のいい男(爆)。
こんな女好きにずーっと付き合ってきた奥さん、もうこういう人だから仕方ないって諦めているんですかねぇ。全く。
まあそれでも、何となく憎めないキャラなのが不思議なんですけどね~喜多川のオッサン…。

この本を購入したのは、まだ全然写真に興味ない頃で、その後一眼レフを買って写真の勉強をしたのですが、勉強してから読むと、時々登場するカメラのウンチクがちょっと面白くなります。
そうそう、逆光のときは露出はプラス気味だよね~とか…。ライカのカメラにエルマー50ミリF2.8って、当時は高かったんだろうなぁ~とか…。
フィルム写真の場合、現像のときにいろいろ調整できるというのは初めて知りました。
今はほんと、写真の敷居が低くなって、いい時代になりましたよね。。。


個人的に気に入っているのは、第四章「暗室」
喜多川が昔世話をした女性(ぶっちゃけ不倫相手)、柊ハルミ。
彼女が大学の山岳隊と山で遭難し、ハルミ含めて隊全員が死亡。残されたのは、ハルミが撮影したカメラとフィルムだけ。
その山岳隊は、ハルミが山で撮影をするために集めたメンバーだったのですが、素人のハルミが皆の足を引っ張り工程が遅れ、こういう結果になったのではないかと叩くマスコミ。
その中で、喜多川と写真仲間の仁科はハルミの残したフィルムを現像して真実を知ろうとするのですが…。

ハルミの残した最後のフィルムは喜多川の手によって写真になり、彼は真実を知ってぽろぽろと涙をこぼします。
このシーンは、読んでいるこちらも涙がこぼれそうになりました。

フィルムの巻き戻る音を、彼女は雪の中で聞いたのでしょうか?それとも聞く前に意識を失ったのでしょうか?出来たら前者であってほしいと私は思います。
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さまよう刃



東野さんといえば、映画にもなったガリレオシリーズや、阿部寛が演じた加賀恭一郎のシリーズなどが有名ですが、どちらかというと、スラスラと読みやすい本…というイメージがあるような気がします。
※まあこの人の大半の著作はそうなんですけどねw

しかし、その中でも他の著作とは明らかに一線を画していると思われるのが、このさまよう刃
この著者が本気出したらこんなすごいものが出来るんだ!と読んだ瞬間驚愕した本です。
私が知る限りこの本は何の賞も受賞してないと思うけれど、この本こそ直木賞ではないのか!とマジで思いました。
※いや「容疑者Xの献身」もいいんですけどね(^^;)

内容は、少年3人が、花火帰りの14才の少女をさらって監禁、レイプの果てに薬で殺してしまうという、かなりえげつない、むごたらしい内容です。
少女には母はなく、父子家庭だったのですが、その父、長峰重樹は偶然犯人の情報を得て、娘の復讐をたった一人で果たそうとします。

少年犯罪の問題、復讐の是非が、警察の視点、被害者家族の視点、一般人の視点から、きれいごと抜きにとことん追求する様子は、東野さんの「本気」「手加減ナシ」を感じさせられます。

犯人は未成年、名前も公表されず罰も大したことはない。だから自分の手で娘の復讐をするのだ!

固い決意で行動する長峰に対して、警察官含め、多くの人の心が動かされます。
しかし同時に、警察は長峰の復讐を、何としても止めなければならない。

最近このテの犯罪小説の場合「犯人側にも同情出来る何かがあった」的な設定をつけることが多いような気がするのですが、この少年たち、特に主犯の少年には、一切の同情の余地がありません。
ただ、かわいい子とヤりたいからヤっただけ。そしたら死んじゃったから、捨てただけ。
反省も何もなく、警察からも、「ただ捕まりたくないから」逃げるだけです。

だからこそ、事情を知る警察官は、このまま職務を全うすることが、被害者遺族や加害者の為になるのか…という、ジレンマと戦いながら、長峰をひたすら追い続けるのですが…。


終盤、長峰はついに主犯の少年の前に現れ、銃の照準をピタリと合わせます。
周囲の音も声も一切聞こえず、ただ冷静に娘に語りかけながら銃を構える長峰と、おそらく生まれて初めて死の恐怖と対面し、凶悪犯罪者からただのガキに戻った少年。
そして、ついに復讐の瞬間が!という時に、長峰の耳に入ってきた、たった一人の声…。

ページをめくるのがもどかしいほど、話はどんどん進んでいきます。
正直、後味のいい話ではありません。
最終的に、登場人物は、誰一人幸せになれなかった。
だから、面白かった…とは絶対言えないけれど、それでも読んでよかったと心から思いました。


最後に、このセリフでレビューを締めくくります。

「警察は市民を守っているわけじゃない。警察が守ろうとしているのは法律のほうだ。法律が傷つけられるのを防ぐために、必死になってかけずりまわっている。では、その法律は絶対に正しいものなのか。絶対に正しいものなら、なぜ頻繁に改正が行われる?法律は完璧じゃない。その完璧でないものを守るためなら、警察は何をしてもいいのか。人間の心を踏みにじってもいいのか」

警察が守ろうとしているのは、市民ではなく法律のほうだ…。
世間一般のニュース等を見ていると、本当にその通りだよなぁと思わされます。

初ものがたり



1999年に新潮社から出ていた初ものがたりが、今年の7月にPHP文芸文庫から完本として出版されていたらしいですね~。
本屋をのぞいたら、懐かしい本が山積みになっていて、ちょっとびっくりしました。
完本は、以前新潮社から出ていたものに、3つのエピソードを付け加えて出版したとか。。。

この初ものがたりは、江戸時代を舞台に、本所深川一帯をあずかる「回向院の旦那」こと岡っ引きの茂七が、子分の糸吉や権三らと難事件の数々に挑む物語で、短編集になっているので、とても読みやすい。
いや、読みやすいのは、短編集だからではなく、宮部さんの文章だからか。
とにかく、この時代のことなんか歴史の授業程度の知識でも、すらすらと読め、いつの間にか江戸の下町にどっぷり浸かってしまうのです。
※これは初ものがたりに限らず、宮部さんの江戸もの全般に言えることですがw

お店を「おたな」、手下を「てか」と自然に読めるようになり、薮入り(やぶいり)、差配人(さはいにん)…という言葉がすっかり頭に馴染んでしまえば、もう宮部江戸ワールドの一員(私含むw)!

そして初ものがたりが他の宮部さんの江戸ものと違うのは、各章ごとに美味しい食べ物が登場すること。
最初の章で、町に現れた稲荷屋の屋台の親父。この人が謎の人物で、元はお侍さんらしいが、一体どういう筋の人なのか(作中結局名前も出てこなかったし最後まで正体不明…)!?
店を出すと必ずショバ代をもらいに来るヤクザの勝蔵ですら、すごすご逃げ帰る始末で、茂七も事あるごとに気になるものの、なかなか素性を聞き出せない。
その屋台では、名前通りお稲荷さんがメインなのですが、他にもいろいろと美味しそうなものが沢山出てきて、空腹の時間に読むのは、精神的によくないですw

しかもよく考えてみたら、この時代、一部の雲上人をのぞけば、庶民が食べていたものは、ほぼ「地産地消」。産地偽装なんてあり得ない。
また、冷蔵、冷凍技術もないし、缶詰もないし、ハウス栽培もないので、食べ物は全て季節のもの。その季節に食べられるものだけを食べていた時代だったんですよね。

もちろん現代の私は、その技術の恩恵を十二分に受けている立場なのですが、この時代のこういう食事も悪くないよなぁ~なんて思ってしまったりして…。
※ただし現実的に考えて、この時代で自分が暮らせるとは思えないわけですがw


ところで、宮部さんの江戸時代もの、これがあまりに上手く出来てて、ついこれが本物の歴史小説のような気がしてしまうのですが、鵜呑みにするのはどうも危険らしいです。

というのも、江戸時代の研究家杉浦日向子さん(2005年没)の著書によると、まず岡っ引きという言葉は、いわゆる蔑称で、要するに先生を不良が「センコー」とか呼ぶのと同じようなことだとか。
つまり、自分で「岡っ引き」と言うことはあり得ないし、本人に岡っ引きと言うときは、相手にケンカを売る時。少なくとも親しい相手や尊敬する相手には「岡っ引き」とは言わないとか。
最初に作品の紹介で「岡っ引きの茂七」と書いてあるのは、本の裏の紹介文からの引用で、本文中にもちょくちょくこの言葉が出ますが、表現としてはおかしいと思いながら読んだ方がいいのかも。

それから途中「薮入り」という言葉を出しましたが、これも、当時は上方(関西)で使われていた言葉だとか…(でもwikiではまた違うことが書いてあるなぁ~。個人的には杉浦さんの説が正しいと思いたいですが、最近また説が変わったのでしょうか?)。


ま、そんな細かいことはともかく、とりあえず読んでみることをオススメします。

顔 FACE



「一人警察モノ」とか呼ばれるくらい、警察小説ではあらゆるジャンルに長けている横山秀夫ですが、この本は鑑識課で似顔絵を担当していた平野瑞穂が、一年前にある事件をきっかけに似顔絵が描けなくなり、半年の休職の後、広報へ異動。心の傷を治して再び鑑識へ戻るまでの話が短編集としてまとめられています。
※「ある事件」は前に出た短編集「陰の季節」の中の「黒い線」に詳しく掲載されていますが、未読でも最初にその事件について触れているので大丈夫です。

犯人の似顔絵…というのは、事件が起きるとテレビなどで見かけますが、その内情を読むのは初めてだったので、描く側の苦悩やスキルは、この小説で初めて知りました。
短編集ですが、主人公瑞穂が、徐々に自分を取り戻していく過程は、まるで長編小説のよう。


ところで、私は最初図書館で単行本を借り、その後文庫本を購入したのですが、単行本と文庫本で違う箇所発見!
※作家さんによってはよくあることらしいですね?この著者はどうなのか分からないのですが…。

話は思いっきりネタバレになりますが、第4話目の「共犯者」。

この話は、銀行の支店に対する防犯訓練が主題になっています。
訓練とはいえ、事前の予告は支店長のみ。犯人役は本気で支店に押し入り、本気で行員を脅し、本気で金を奪って逃走!どこまで打ち合わせ通りに出来るかを見極める重要なデモンストレーションなので、やる方も一切の手加減ナシです。

ところが、以前の訓練にて、余りの恐怖に失禁してしまった女性行員が…。
彼女は短大出て一年目。年頃の女性が大勢の前で失禁したという事実に耐えられず退職、その後失意から立ち直ることなく病死します。
そして彼女の祖父が警察と銀行に復讐する為、たまたま手に入れた防犯訓練の情報を利用して、同じ時刻に同じ銀行の別の支店に強盗をしむけ、警備の手が訓練に集中していた警察に恥をかかせます。

祖父は、(訓練予定の)支店近くにある若者向けのショップで洋服を見ながら、訓練が始まるタイミングを図っていましたが、後にその不自然さに気づいた瑞穂が一人で祖父の住むアパートに説得に行きます。

結局警察も少し遅れて事実にたどりつき、瑞穂の説得中にアパートに到着するのですが、瑞穂はドアを押し破られる前に自分から外に出て欲しいと最後の説得をし、祖父もそれに従うのですが…。

最後、瑞穂にかける言葉が単行本と文庫本で違っているのです。
単行本では「あんたは真由美(孫)によく似ている」(というニュアンス。すみません読んだのずっと前なのでうろ覚え…後で確認します^^;)。
そして文庫本では「あの店(訓練開始まで待機していたショップ)には、真由美に似合いそうな服がいっぱいあった」になっています。

当然文庫の方が後から出版されたので、単行本を出した後、文庫本の文章に直した…ということなのですが、何故直したのでしょうね?

ニュアンス的には、単行本の場合は、瑞穂を通して孫の姿を見たように取れますが、文庫本だと瑞穂と関係なく孫のことを回想しているような雰囲気です。

祖父は説得に来た瑞穂に、孫についてこう語ってます。
「真由美はいい子だった…。あんないい子はいなかった…。純真で優しくて、それに、大きくなっても年寄りを馬鹿にせず、真っ直ぐ人を見つめる子だった」

このセリフの人物像は、涙ながらに祖父を説得をする瑞穂の姿に少し被ります。
だから個人的には、単行本のバージョンの方が私は好きなのですが…。

ただし、失意のまま病死した女性と、失意から立ち直る過程にいる瑞穂は、全く別の人物である。だから二人は似ているはずがない…と言えるような気もします。
ひょっとしたら、横山さんはそういうことを考えて、セリフを変えたのかもしれません。

どちらにしても真実は分からないんですけどね。

猫のなるほど不思議学



猫を飼い始めて早6年になりますが、飼い始めたのは突然のことで、心の準備も猫グッズの準備も何もしていない状態で迎えたのを思い出します。

さすがにこのままじゃマズイだろう…と、本屋さんや図書館で猫に関する様々な本を見つけ、ぱらぱらと読みましたが、その中で唯一購入したのがこの本でした。


著者は岩崎るりはさんという、チンチラのブリーダー。
本には、ブリーダーを始めるきっかけになった明日香をはじめ、12匹のチンチラが登場するのですが、とにかくよく観察しているのに驚きます。
猫の序列を調べた猫パンチオーダー(食事の時は優位にある猫から先に食事をしていて、それを乱す猫がいると上位の猫から猫パンチが飛ぶらしいwそのパンチ数で序列を調査)や、メスとオスのケンカのやり方の違い、生殖にまつわるかなりちょっとエッチなお話(42pも使ってるしw)、遺伝による性格の違い…etc

特に面白いのが、猫の排泄に関する話で、猫は砂の上で排泄すると、かならず上から砂をばっさばっさとかけるのですが(猫ババ行動)、この辺個人差があって、ものすごくしつこく砂をかける猫と、そういうことに全く無頓着な猫がいます。
で、別の本には、その差について、群れのリーダーは余り砂をかけないという調査の結果から、砂をかけない猫は飼い主をボスだと思っているからだ…と書いてあるのですが、著者はその見解については

「優位にある猫というのは、もともと気丈な分無頓着です。そのためトイレにも鷹揚で、砂もかけずに飛び出していったりもします。優位に立てない猫というのは、生まれつき小心者で、他の猫の排泄物までいつまでも気にして砂かけしています。猫ババ行動の差異は地位から生じたものというより、天性の気質に大きく影響されるものであり、それが優位劣位にも結びついているというほうが現実的でしょう」

と書いています。
確かにその通りで、ウチには2匹いますが、神経質な方(大福)はいつまでも砂をかけ、大雑把な方(モコ)はデカいウンチもほったらかしですw
この辺りは岩崎さんの見解の方に納得いくような気がします。


また、最後には昨今問題になっているペットロスにも触れていて、こう書いています。

「ペットロス=ペット溺愛が生んだ現代病でしょうか?いいえ、それはペットを溺愛することが原因なのではなく、孤独に疲れ果てた人を癒すために猫が飼われるようになったことに原因があるのではないでしょうか。
~中略~
人間関係が希薄になってしまった現代人は、知らずと猫の世界を侵略し、愛情を押し付けているのではないでしょうか。猫を飼っているつもりが、猫に飼われてしまっている人は、猫に飼われたふりをしながら、一段高いところから猫を眺めてみるのも悪くないでしょう」


つまり、猫はあくまで猫なのだから、猫として接しなさい…と言うことですね。
猫と暮らして6年にありますが、今でも、そしてこれからも、この本を手に取るたびに、その言葉を頭に留め置くようにするつもりです。


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