真保さんといえば、織田裕二主演の映画「ホワイトアウト」や「アマルフィ」などが有名ですが、個人的にはこの人のは短編集の方が好きなんですよね~。
※でもホワイトアウトや奇跡の人なんかは好きだけど…♪
この「ストロボ」は、写真家、喜多川光司の20代~50代までのある時期を切り取って、一章ずつ短編集にしてある小説です。
が、この小説の珍しいところは、
若い時から50代までの各章の掲載が逆になっているということ。
具体的に言うと、第五章「遺影」(50歳)→第四章「暗室」(42歳)→第三章「ストロボ」(37歳)→第二章「一瞬」(31歳)→第一章「卒業写真」(22歳)…という風に読み進めるわけです。
で、この喜多川のオッサン、
ものすごい女好きで、各章必ず女性絡みの揉め事が…w
それなのに奥さんのことはやっぱり一番愛してて、第五章「遺影」のラストでは、
「自分の遺影を撮影してもらいたいのはこの女しかいない」と奥さんに撮影を依頼するという、超都合のいい男(爆)。
こんな女好きにずーっと付き合ってきた奥さん、もうこういう人だから仕方ないって諦めているんですかねぇ。全く。
まあそれでも、何となく憎めないキャラなのが不思議なんですけどね~喜多川のオッサン…。
この本を購入したのは、まだ全然写真に興味ない頃で、その後一眼レフを買って写真の勉強をしたのですが、勉強してから読むと、時々登場するカメラのウンチクがちょっと面白くなります。
そうそう、逆光のときは露出はプラス気味だよね~とか…。ライカのカメラにエルマー50ミリF2.8って、当時は高かったんだろうなぁ~とか…。
フィルム写真の場合、現像のときにいろいろ調整できるというのは初めて知りました。
今はほんと、写真の敷居が低くなって、いい時代になりましたよね。。。
個人的に気に入っているのは、
第四章「暗室」。
喜多川が昔世話をした女性(ぶっちゃけ不倫相手)、柊ハルミ。
彼女が大学の山岳隊と山で遭難し、ハルミ含めて隊全員が死亡。残されたのは、ハルミが撮影したカメラとフィルムだけ。
その山岳隊は、ハルミが山で撮影をするために集めたメンバーだったのですが、素人のハルミが皆の足を引っ張り工程が遅れ、こういう結果になったのではないかと叩くマスコミ。
その中で、喜多川と写真仲間の仁科はハルミの残したフィルムを現像して真実を知ろうとするのですが…。
ハルミの残した最後のフィルムは喜多川の手によって写真になり、彼は真実を知ってぽろぽろと涙をこぼします。
このシーンは、読んでいるこちらも涙がこぼれそうになりました。
フィルムの巻き戻る音を、彼女は雪の中で聞いたのでしょうか?それとも聞く前に意識を失ったのでしょうか?出来たら前者であってほしいと私は思います。
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