昨今、本に関して聞くニュースといえば、大抵
出版不況、
ネット通販に押されて書店廃業など、先行き明るいとは言えないニュースばかりですが、そこら辺本当のところはどうなのよ?という
業界内部の話を詳しく解説しているのがこの本です。
話はこれまでの書店の経営の歴史や、一般人には見えない取次の役割、そしてどうして不況と言われるようになったのか…などなど、相当分かりやすく書いてて、著者の考察なども非常に興味深いです。
まず出版不況と一口に言っても、ただ本が売れなくなったわけではなく、大きな原因と言えるのは
雑誌不況。
雑誌から得られる広告収入があるから、出版社は本が売れなくても経営が成り立ち、雑誌が売れることによって町の小さな書店の経営を支えてきたわけですが、最近はその雑誌が売れなくなってきた…というのが大きな原因のひとつ。
雑誌が売れなければ本で収益をまかなうしかなく、出版社はこれまで以上に新刊を出さなければいけなくなり、同時に本を書く作家にも大きな負担がかかることに…。
そして出版社や作家の労力が増えた割には、そんなに本が売れまくるわけではない。
なぜなら人々における読書率…つまり本を読む人の割合は、今も昔も大きく変わらず、変わったものと言えば、若者世代の減少と、団塊世代が引退したことで以前より新刊を買わなくなったことくらいか。
そして出版業界の天敵…かもしれない
ブックオフやアマゾンの台頭についても細かく解説しています。
面白いのはアマゾンがこれほど日本でヒットするとは、誰も予想してなかった点。
・本を買うきっかけはジャケ買いが多いから現物が見れないネットからは買わない
・日本は全国津々浦々に書店があるからネット書店は必要ない今思うと、本当に
浅はかな予想だと思わざるを得ません。
というより、この程度の予想しか出来ないから、ロクな対策も立てられず、時代の波に乗れず現在「出版不況」などと呼ばれるんじゃないですかね。
ところで著者はアマゾンの成功について「とにかくない本が(ほとんど)ない」「注文してすぐ届く」「顔が見えないから恥ずかしい本でも買い易い」という点を取り上げてますが、私はアマゾンの成功のきっかけはそこではないと思います。
私もかなり…というか、欲しいものがあるととりあえずアマゾンを検索するわけですが、アマゾンの機能の中で一番売り上げに貢献していると思うのは
この商品を買った人はこんな商品も買っていますや
この商品を見た後に買っているのは?の項目ではないでしょうか。
あるドラマのDVDを検索する→ふと
この商品を買った人はこんな商品も買っていますを見るとそのドラマに関する関連本が…。へぇ~こんなの出してるんだ…とクリックすると、さらに
この商品を~で面白そうな関連本が…。
これを繰り返していると、5回に1回くらいは商品を
ほしいものリストに入れてしまうし、値段によってはそのまま購入してしまうことも。
アマゾンが何より優れているのは、
ユーザーが潜在的に欲しいと思っている商品のところまで巧みに誘導する技術でしょう。
そういう意味では、一般の本屋さんも、最近は上手に関連本を棚に並べるようになりましたが、正直まだまだ探し難いと感じることが多いです。
ちなみに他の業界では昔からこの売り方を活用してますよね。
例えば洋服屋さんでよく見かける、商品でコーディネートされているマネキン。
あれを見て「このジャケットこんな風に着こなすのか」と参考にするだけでなく、時には「あのマネキンの付けてるネックレスちょっとかわいい」などと、洋服ではない商品に目がいくこともあります。
家具屋さんでも、店内の一角に商品を上手にインテリアしてある光景をよく見かけます。
ああしておけば部屋のイメージが分かりやすいし、テーブルを買った時に椅子を購入してくれる確率も増えるでしょう。
一方本屋はどうだったか。
大型書店はともかく、昔の一般的な町の本屋を思い出すと、とりあえず新刊や雑誌だけを表に出してあとは出版社順、作家順に並べる程度のことしかしてなかったように記憶しています。そして立ち読みをしてる人がいるとあからさまに迷惑そうな顔をして追い出したり。
アマゾンを始めとするネット通販、電子書籍が出る前ならそれでもお客さんは本を買ったのかもしれませんが、それは本を買う手段がそれしかなかったからです。
一度
欲しい商品まで楽々誘導してもらうような経験をしてしまうと、もう昔には戻れないのが人間というものでしょう。
特に最近数を減らしている町の本屋さんは、そのことに気づくのが遅すぎたのではないでしょうか。
PR