前作消えた帆船から一年以上…というかもうすぐ二年経ちますが、やっと
The Secret Notebooks of Sherlock Holmesの最後の話「グスタフソンの宝石」の抄訳が終了しました!
前の話も長かったけど、この話は第一章から四章まであって、さらに長かったです。その割には忙しくて出来ない時期があったりして、我ながらよく最後まで訳せたと思ってます…。
そんなわけで今回の話は5つくらいに分けて紹介したいと思います。
(原題は
The Case of the Gustaffson Stone)
この事件が起きたのは、ワトスンが結婚する少し前のことだ。
様々な事情で、この事件が公になることはないかもしれないが、いつか公開する日が来るかもしれないということで、記録だけ残しておいた。
ある初秋の朝、ホームズはある人物から「大胆かつ繊細な問題について是非貴殿に相談したい」という手紙を受け取った。
手紙の主はエリク・ヴァン・リングスタード。
ホームズは手紙の様子からドイツ人と推察し、依頼の内容が気になったワトスンも、会見に同席することにした。
一時間ほどして依頼人が部屋に案内されてきた。
堂々とした佇まいの、威厳のある紳士で、ドイツの伯爵だと自己紹介をした。
依頼の内容は、友人(ブラウン氏)の叔父に関することだ。
叔父さんという人は、立派な人ではあるのだが、若干の借金があり、家宝の宝石を一時期質に入れたことがあるという。
とはいえ、借金は大した額ではなかったので、またすぐ買い戻し宝石箱に納めたそうだが、よく宝石を調べると偽者と判明したとか。
叔父さんはそのことを悔やみ、卒中を起こし、既に亡くなっているが、ブラウン氏はこのことで叔父の名誉が損なわれたくない為、どうしても宝石を取り戻したいそうだ。
宝石をすり替えた人物は、もう判明していて、ハプスブルグ家の末裔という噂がありながらも、悪どい高利貸しやゆすりで有名なクライスト男爵。
現在インペリアルホテルに滞在中で、手中にある本物の宝石は、アメリカのコレクターブラッドベリー氏に売るつもりらしい。
クライスト男爵は、自前の頑丈な金庫を持っていて、宝石はその中にあり、常に寝室に置いてある。
そして次の金曜の夜に親しい女優と観劇して、土曜の朝までホテルには戻らない予定だから、出来ればそのチャンスに宝石を取り戻して欲しいとのことだ。
ちなみに男爵はインペリアルホテルではスイートに宿泊するが、寝室の隣にはイゴールという金庫番がいるので、要注意とのこと。
ただしスイートの両隣は、リングスタード伯爵の部下オスカーとニルスが押さえてあるそうだ。
男爵の持っている金庫は、鍵が三つある特注品で、さらにその金庫を革製のバッグに入れてそこにも鍵をかけてあるという。
こっそり部屋に入るのも困難だが、その金庫を開けるのはさらに難しいだろう。
そして宝石を取り戻したことは、出来たら男爵には知られないほうが、余計なトラブルを避けられて都合がいいということで、そっくりの模造品とすりかえて欲しいと伯爵は付け加えた。
そこで模造品を手渡されたが、それは黄色っぽい卵型の石に男性の顔が彫ってあり、金のフレームで覆われていて、ペンダントヘッドになっている。
ワトスンには正直、それほど価値のあるものには見えなかったが、ホームズは驚きの表情を浮かべた。
「…なるほど。了解しました。
しかし成功を確約することは出来ませんがよろしいでしょうか?」
「もちろんです。私はノーサンバランドホテルに滞在しておりますので、連絡はそちらへお願いします」
伯爵はそう言って部屋を出ていったが、この難題にホームズはどうするか!?
●偽物にすり替えられて、卒中を起こすくらいなら、そもそも質に入れなければよかったのに…とか他の宝石にすればよかったのに…と思うのは私だけか?w
●トムスンさんの前の著作「ホームズのドキュメント」の中の「ヴァチカンのカメオ」に貴族相手の質屋「上流向けの七つ屋(原文:Uncle to the nobs)」が出てくるけれど、叔父さんとやらもそういうとこに預けたのかしら?
●この話に出てくる伯爵は原文
Count。あれ?伯爵って
Earlじゃなかったっけ?と思ったら、英国以外ではCountらしいですね。でも英国でも伯爵夫人はCountessなのが不思議です。
●盗んだ当人も見分けつかないような模造品があるなら、もうそっちを家宝すればいいじゃん~ってそういう問題ではないかw
●まあ私が男爵だったら、そんな大事な品物、いくら女優とデートするからって、ホテルに置きっぱなしにはしないな~。ペンダントになってるのだから、チェーンつけて首から下げておくのが一番ベストな気がするけれど…。
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