例のクライスト男爵が女優とオペラにいってそのまま一晩帰ってこないという、決行当日。
ホームズとワトスンは夜7時に221Bを出発する予定で、事前の変装にとりかかった。
様々なレパートリーがあるホームズだが、この時はごく単純なもので、ホームズはヒゲを付け足した程度、ワトスンは茶色のかつらとメガネを使用することにした。
インペリアルホテルでは、リングスタード伯爵(国王)の部下が男爵の隣の部屋を押さえてあるので、二人は一直線にそこへ向かい、部下の一人オスカーの案内で部屋に入った。
そしてワトスンは、ゴム底の靴を用意するよう言われた意味をようやく理解した。
窓の外に出て、壁づたいに隣の男爵の部屋に進入するのだ。
一応命綱があるとはいえ、真下は窓ガラスに囲まれたウィンターガーデンがあり華やかなパーティが開かれている。
落ちたらどんな惨劇があることか…ワトスンは窓から外をながめて、惨劇が起きた翌朝の新聞の見出しを想像した。
一方ホームズはこれからすることを冷静にかまえて、解錠セットやコピーの宝石を絶対落ちないように身に付けている。
そして準備が終わると、体に命綱をつけて、もう片方をベッドの足に結んだ。
ワトスンが注意を促そうとするも、ホームズは迷いなく窓を越えて、外の窓枠に足場を見つけると、そこから壁のでっぱりを利用して、隣の部屋へと進んでいった。
ワトスンは、そんなホームズの動きから目を離せなかったが、男爵の寝室の窓は運よくカギが開いていたらしく、ホームズはすんなり中へ入った。
そして次はワトスンの番だ。
覚悟を決めたワトスンは、ホームズと同じように窓枠に足をかけて、慎重に壁を進んでいった。
無事男爵の寝室の窓まで辿りつくと、ホームズが手を伸ばし、中に入るのを手伝い、一枚のメモを見せた。
“隣の部屋にイゴールがいる。気をつけろ”
そしてワトスンは隣の部屋の監視の為に、寝室と隣の部屋をつなぐドアの付近に立ち、ホームズは解錠作業にとりかかった。
カギ付きの棚は難なく開いたが、問題は三つのカギが付いている金庫だろう。
これもチャーリー・ペックの解錠セットがあればスムーズに開くと思われたが、意外にもホームズは苦戦していた。
ワトスンは、時折ホームズに合図を送りつつも、それ以上は何も出来ない。
永遠と思われる長い時間が過ぎた後、ようやく金庫が開いた。
しかしその瞬間、ワトスンは隣の部屋から不審な物音を感じた。
寝室の隣の部屋に控えているイゴールが、こちらへ向かってくるのだ。
さて、二人の運命と宝石の行方はいかに!?
●2/5でホテルの内部構造とか部屋の鍵とかいろいろ調べていたホームズですが、壁づたいにクリフクライム(byVS嵐)なら別に必要なかったような…。
●最初はもっと策略めいたすり替えをするかと思ったら、結構強引な方法だし。そういえば
犯人は二人の時も強引な方法使ってたな~。ホームズって何だかんだ作戦思いつくけど、結局一番シンプルな方法を使いがちw
●ワトスンの変装…
グラナダ版のワトスンで想像するとウケるー。でも高い場所は地上に比べると
風が強いから、かつらは止めておいたほうがよかったのでは?
●壁から落ちた時の翌朝の新聞の見出し…どんなんでしょうね~。というか3Fから落ちたら普通は死にそう…。「かの名探偵インペリアルホテルにて不可解な死!偶然お忍びで宿泊していたスカンディナヴィア国の王室関係者との関係は!?」とか?
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