ホームズとワトスンの乗った馬車は、メークピース・コートに向かっていた。
ワトスンには覚えのない場所だが、近づくにつれて、見覚えのある景色になってきた。そして廃工場の壁が見えたとき、ふいに思い出した。
「そうか、トスカ枢機卿の死体が発見された場所だ!」
しかし馬車はそこを通りすぎて、粗末な小屋が立ち並ぶ一角に停車した。
表札には「Jas. C. Buskin(バスキン) & Son」と「BUILDER(訳:建築会社)」と書かれている。
すると、店の中から1人の老人が姿を見せた。
「バスキンさんですね?」とホームズが声をかけ、目的を明かすと、老人は真っ青になり倒れそうになった。
その騒ぎを聞いて、老人の息子と思われる青年も家から出てきた。
そして真相が老人の口から明かされた。
老人にはリジーという妹がいたが、30年ほど前にロンドンに出稼ぎに行った際、裕福なイタリア人男性と恋におちたが、イタリア人が国に帰った後妊娠に気づき、男の子を出産。
だが産後の調子が思わしくなく、すぐに亡くなり、男の子は老人夫婦の実子として育てられた。
イタリア人は、数年後にこの場所を見つけたが、リジーの死とわが子の出産を知り、驚いたようだが、それから年に一度、金銭援助をしにここにやってきていた。
老人夫婦は、イタリア人の素性はまったく知らず、モレッリという名前だけ聞いていたらしい。
モレッリは息子に対して自分が親だと名乗ろうとはしなかったから、きっと国に家族がいたに違いないと思っていたのだ。
あの日も、彼はいつものようにここに来たが、突然倒れて亡くなってしまった。
老人はモレッリの連絡先を知らなかったので、誰も来そうもない廃工場に遺体を安置したとホームズに説明した。
老人と息子はこれからどうしたらいいか、ホームズに聞いたが、彼の答えは意外なものだった。
「何もしなくていい。ぼくが何とか取り計らいましょう」
その言葉の通り、ホームズはマクドナルド警部とオシェア神父に、調査は失敗だったと告げた。
二人とも最初は納得しかねる様子だったが、最終的には納得し、終了した。
ワトスンはこの事件を一応記録しておいたが、発表はかなわないだろう。
だが、何も知らなかったバスキン親子が罪に問われることもなく、大団円の結末となった。
●最初失踪のことを聞いたとき、枢機卿はこっそり二重生活を送ってて、愛人の家か何かで死んだんじゃない?と思いましたが、大方予想通りでした(イギリス版ゼロの焦点)。というか、英語の勉強に来たのに女の子くどいちゃって、妊娠までさせちゃって、神に人生を捧げた男とは思えないですなぁートスカさんw
●オシェア神父の年齢はさっぱり分からないけれど、雰囲気から40~50代?ひょっとしたらトスカ枢機卿と同年齢の可能性も?ということは、
オシェア神父はうすうす事情を知ってた可能性もあるような?だから英語の勉強の詳細を話したくなかったんじゃないかなぁ。。。と邪推しちゃったりして。とはいえ、バスキンのことまでは知らなかったはず。知ってたら真っ先にそこに行ってるだろうし。ホームズの失敗を疑った理由もその辺にあるのかも?
●バスキン父が息子に本当の父親を明かした時、息子はそんなに驚いてはいなかった気がするけれど、そりゃあ毎年見ず知らずのイタリア人が自分の家庭に多額の援助をしてるんだから、
薄々感づいてはいたんじゃないのか?でもバスキン夫婦のために、知らないフリをしてあげたんだろうなぁ~。
●というか、バスキン父の言葉、方言交じりなのか知らないけれど、さっぱり分からない英語で四苦八苦。’E said ’e ’ad a business in Rome(正:He said he had a business in Rome)とかばっかりで、
翻訳以前に普通の英語に直す作業がめちゃ大変でした。
●↑後に分かりましたが、このHを発音しない英語はコックニーと呼ばれるロンドン訛りだそうですね。日本で言う下町の江戸っ子のしゃべり方みたいなものか?
●完全に死体遺棄なのに、バスキン親子は罰金程度で済む思ってる楽観ぶり。でもあの階級じゃ知らなくても仕方ないよねと自分の手柄を犠牲にして親子を守ったホームズさんアッパレ。
●枢機卿、本来は妻も子も持てないはずなのに、
突然死の場所が年に一度だけ訪問する実の息子の家だったなんて、何という偶然。家族に看取られて、彼にとっては幸せだったのかも?これぞ神の思し召し!
●ホームズは今回の失敗で、多少の信頼は失ったらしいが、その後に起きた執事による主人殺しの事件で返り咲きに成功。…ってトムスンさんまで語られざる事件を創作するのはやめて~wアマチュア乞食に出てきた
ピーナッツ長者の話も気になってるんだから~ww
ということで、4つ目の話もこれで完了!本の長さ的にはちょうど半分くらいのようです。
やっと半分!でもまだ半分!
ちなみにここまでかかった期間は、ちょうど一年半くらい。うわー、そんなにかかってたのか…と気が遠くなりますね(^^;)
この先はKindleもあるし、もうちょっとペースをあげて訳したいとこですが、やっぱり一年くらいはかかりそうな予感…。
ま、どうせ翻訳本は出ないんだから、何年かかってもいいんですけどねー別にw
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