オシェア神父とウィッフェン夫人が帰ってから少しして、マクドナルド警部の部下と思われる巡査が一般人の変装をして221Bに訪れ、自分と一緒に来るようにと二人に伝えた。
ホームズとワトスンと巡査は、外に泊めてあった馬車に乗り込み、スピタルフィールズに向かうよう、御者に指示を出した。
「おそらく死体が見つかったんだろう。
ひょっとしたら刑事事件に巻き込まれたのかも?殺人事件とか…」
スピタルフィールズは、ロンドンの、いわゆるスラム街と呼ばれる場所の側だった。
そこの廃工場と思われる場所に死体は横たわっており、検視官が検視をしている最中だが、マクドナルドの話によると、死体の特徴を見るに、どうやら失踪した枢機卿にほぼ間違いないようだ。
ポケットの中には、金の十字架と暗赤色の石がはめ込まれた金の指輪があった。
(↑どうもこの指輪が神父の象徴らしいです)
発見者は通りがかりの犬の散歩をしてた男で、検視官の見立てによると、死亡推定時刻は昨日の朝11時頃。
傷その他不審な点はないので、ひょっとしたら病死かもしれないとのこと。
そして持ち物の中には大量の紙幣があったことから、仮に殺人だったとしても、強盗目的ではないだろう。
奇妙なことに、死体の側には二本の平行するラインが見つかった。
これは手押し車の跡で、死体を手押し車に乗せてここまで運んできたというホームズの推理をうけて、警察関係者たちが、その跡を追いかけ始めた。
死体をよく観察すると、右袖部分に何か黄色い穀物がついている。
そして靴の裏にはドロも。手押し車で運んだなら、ドロは枢機卿が死んだ場所でついたはずだ!
ホームズはそれらを回収すると、マクドナルドに何か分かったら必ず報告するからと約束して、ワトスンと一緒に221Bに戻った。
その後ホームズは持ち帰った品物をもとに、数時間実験に没頭した。
ワトスンが気晴らしに外出して戻ると、ホームズは実験後に外出したらしく留守のようだ。
だが、1時間もしないうちに勢いよく戻ってきた。
「出かけるぞ、ワトスン!
質問は無用。もうすぐ全て明らかになるから!」
さて、ホームズの見つけた真相とは?
●ミステリで
bodyと出てきたら大抵死体。この話でもやっぱりそうでした。日本語でボディと言ってもそういうイメージないんですけどねー。
●ホームズが馬車の中で
「刑事事件かも」とか余計なこと言うから、つい「トスカ枢機卿殺人事件」とか名づけてしまって、後で訂正しました。
●上の翻訳では、死体の発見場所を
廃工場と一言ですませちゃいましたが、本当は
パーテルノステル・ヤードという名前が出てきました。パーテルノステルというのは、当時普及してた
エレベーターの名称(ヤードは場所とか構内)。この時代エレベーターなんてあったの?と思ったら、1884年に開発されてたらしいです(
wiki参照)。ホームズ物語にエレベーターは登場しないからちょっと意外ですね。ドイルさんは余り使用してなかったのかも?よく使ってたらトリックに登場させてたかもしれないですね。
●死体を発見する人は、今も昔も犬を散歩させてた人。一瞬刑事ドラマでの死体発見シーンが頭をよぎりましたw
●マクドナルドと一緒にいた検視官は、ホームズの大ファン!死体の調査中なのに、
ホームズに会ったことを友達に自慢したい(゚∀゚)とか言ってるしwマクドナルドとワトスンは内心
「Timing!(訳:空気読め!)」と思ってたに違いない!!
●褒められると調子に乗りがちなホームズですが、さすがにこの検視官はウザかったらしく、別れ際の握手は超形式的。この場面で使われた
dismissiveは「拒否するような」とか「軽蔑的な」とか
ひどい言葉ばっかりwさすがに検視官がかわいそうになったので、「形式的に」と訳しました。
●穀物や土でいろいろ明らかにしたらしいホームズ、この時代、警察に科学捜査班とかなかったのかしら?まあ時代が時代だから仕方ないわね~とか思いがちですが、現代を舞台にしたシャーロックでも同じようなシーンがあり、レストレードに
「ベーカー街のCSI」とか呼ばれてましたwいつの時代もシャーロック・ホームズはベーカー街のCSI~☆
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