以前より単行本で出ていて、薄々面白そうだとは思っていたのですが、何せ分厚い本が上下2巻!(←文庫でも出てますが、こちらは上中下の3巻)
読む時間もかかりそうだし…とちょっと敬遠していた所、偶然この作品のアニメ版を見た知人が面白かったのでオススメだと言っていたので、それなら原作読んでみようかなと、借りてみました。
いやぁ、思ったより面白く、あんな長編なのにあっという間に読み終わっちゃいました。
舞台は
今から1000年後の日本。
日本は何故か文明が後退し、パッと見は昭和に戻ったような、のどかな風景が広がります。
そこに住む人々は、見た目普通の人間ですが、みな
呪力という超能力を使いこなし、それぞれ生活に役立てています。
この呪力は、物語の中で最も重要な設定の一つで、人間はこの力を使いこなす為に
大きな犠牲を払っている…という暗い側面が、作中の最初の方から見え隠れし、ある意味この物語の根幹を成していると言えるかもしれません。
それからもう一つの重要な設定が、醜い
バケネズミの存在。
バケネズミは、元々ハダカデバネズミを人間が呪力で改造してこのような姿にしたと言い伝えられており、大きさはネズミより大きく人間より少し小さめ。
普通のバケネズミは人間の言葉を理解しませんが、一部利口なバケネズミは人間の言葉をしゃべり、バケネズミの各コロニー(集団)のリーダーを務めていたりします。
そして常に人間社会で管理されながら独自の集団生活を行い、人間には絶対服従で奴隷のように扱われつつも、人間を「神様」として扱い、畏れ敬っているのです。
そんな物語の主要キャラとなるのが、この話自体の語り手となる
渡辺早季と、幼馴染の
朝比奈覚(さとる)。バケネズミ側の主要キャラが、
スクィーラと
奇狼丸(きろうまる)です。
話の要約は、話全体が長く複雑で、要約なんて無理なので端折りますが、最後まで読んだ上で最も印象的なキャラといえばやはり
スクィーラでしょうか。
彼は最初、早季や覚の前に姿を見せた時は、口が達者でお調子者ながらも規範通り人間への完全服従の態度を崩さず、早季たちを
神様と敬い、呪力を
神様のお力と称えます。
しかし終盤、スクィーラの起こした
ある大事件が全て終わってから早季たちの前に姿を見せた彼は、まるで別人のよう。
早季たちを普通に
あなたがたと呼び、呪力を
悪魔の力だと言いきります。最後は神様扱いしてた人間たちの前で
おまえ達の邪悪な圧政はいつか必ず滅びるという内容を叫んで表舞台から消えていくのです。
この物語に番外編があるとしたら、やはり
スクィーラの物語を読んでみたいです。
早季たちが過ごした同じ時間軸を、スクィーラはどのように過ごしたのか。早季たちと同様に
世界の隠された真実を、ミノシロモドキによって知った瞬間があったはず。そこからどのように考え、計画を立てて実行するに至ったのか…。
ひょっとしたらこっちの方が、「新世界より」の本編より面白い話になるんじゃないかと、つい思ってしまうのです。
PR