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これまで読んだ本、新しく読んだ本の感想を適当に書いていきます。 ※あくまで個人の感想です!
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目次
50音順になってます

悪意
伊良部一郎シリーズ
噂の女
往復書簡
お江戸でござる
オリンピックの身代金
オレたちバブル入行組
折れた竜骨
顔 FACE
化学探偵Mr.キュリー
仮想儀礼
かばん屋の相続
機長、事件です!
Q&A
救命センター当直日誌
金融探偵

コモリと子守り
櫻子さんの足下には死体が埋まっている
さまよう刃
事故―別冊黒い画集Ⅰ
死体置き場で夕食を
十角館の殺人
しまのないトラ
Sherlock: A Study in Pink
シャーロック・ホームズシリーズ
シャーロック・ホームズ秘宝の研究
小公子セディ
小公女
真珠夫人
新世界より
ずっとあなたが好きでした
ストロボ
世界の終わり、あるいは始まり
ダウントン・アビーに於ける職業指南書
武田信玄(あかね文庫版)
地球進化 46億年の物語
冷たい川が呼ぶ
天璋院篤姫
トッカン 特別国税徴収官
トッカン The 3rd おばけなんてないさ
トッカン vs勤労商工会
猫のなるほど不思議学
パーカー・パインの事件簿
初ものがたり
福家警部補の挨拶
ブードゥー・チャイルド
ホームズの伝記比較
ホームズ・パロディ(J・トムスン)
星新一のショートショート
「本が売れない」というけれど
ぼんくら
マスカレード・ホテル
マンガ版シャーロック・ホームズ
万能鑑定士Qの事件簿のシリーズ
「見たいテレビ」が今日もない
ミッキーマウスの憂鬱
密室殺人ゲーム王手飛車取り
密室の鍵貸します
みんないってしまう
モンスター
夜行観覧車
ラプラスの魔女
霊柩車No.4
ワイルド・スワン
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さまよう刃



東野さんといえば、映画にもなったガリレオシリーズや、阿部寛が演じた加賀恭一郎のシリーズなどが有名ですが、どちらかというと、スラスラと読みやすい本…というイメージがあるような気がします。
※まあこの人の大半の著作はそうなんですけどねw

しかし、その中でも他の著作とは明らかに一線を画していると思われるのが、このさまよう刃
この著者が本気出したらこんなすごいものが出来るんだ!と読んだ瞬間驚愕した本です。
私が知る限りこの本は何の賞も受賞してないと思うけれど、この本こそ直木賞ではないのか!とマジで思いました。
※いや「容疑者Xの献身」もいいんですけどね(^^;)

内容は、少年3人が、花火帰りの14才の少女をさらって監禁、レイプの果てに薬で殺してしまうという、かなりえげつない、むごたらしい内容です。
少女には母はなく、父子家庭だったのですが、その父、長峰重樹は偶然犯人の情報を得て、娘の復讐をたった一人で果たそうとします。

少年犯罪の問題、復讐の是非が、警察の視点、被害者家族の視点、一般人の視点から、きれいごと抜きにとことん追求する様子は、東野さんの「本気」「手加減ナシ」を感じさせられます。

犯人は未成年、名前も公表されず罰も大したことはない。だから自分の手で娘の復讐をするのだ!

固い決意で行動する長峰に対して、警察官含め、多くの人の心が動かされます。
しかし同時に、警察は長峰の復讐を、何としても止めなければならない。

最近このテの犯罪小説の場合「犯人側にも同情出来る何かがあった」的な設定をつけることが多いような気がするのですが、この少年たち、特に主犯の少年には、一切の同情の余地がありません。
ただ、かわいい子とヤりたいからヤっただけ。そしたら死んじゃったから、捨てただけ。
反省も何もなく、警察からも、「ただ捕まりたくないから」逃げるだけです。

だからこそ、事情を知る警察官は、このまま職務を全うすることが、被害者遺族や加害者の為になるのか…という、ジレンマと戦いながら、長峰をひたすら追い続けるのですが…。


終盤、長峰はついに主犯の少年の前に現れ、銃の照準をピタリと合わせます。
周囲の音も声も一切聞こえず、ただ冷静に娘に語りかけながら銃を構える長峰と、おそらく生まれて初めて死の恐怖と対面し、凶悪犯罪者からただのガキに戻った少年。
そして、ついに復讐の瞬間が!という時に、長峰の耳に入ってきた、たった一人の声…。

ページをめくるのがもどかしいほど、話はどんどん進んでいきます。
正直、後味のいい話ではありません。
最終的に、登場人物は、誰一人幸せになれなかった。
だから、面白かった…とは絶対言えないけれど、それでも読んでよかったと心から思いました。


最後に、このセリフでレビューを締めくくります。

「警察は市民を守っているわけじゃない。警察が守ろうとしているのは法律のほうだ。法律が傷つけられるのを防ぐために、必死になってかけずりまわっている。では、その法律は絶対に正しいものなのか。絶対に正しいものなら、なぜ頻繁に改正が行われる?法律は完璧じゃない。その完璧でないものを守るためなら、警察は何をしてもいいのか。人間の心を踏みにじってもいいのか」

警察が守ろうとしているのは、市民ではなく法律のほうだ…。
世間一般のニュース等を見ていると、本当にその通りだよなぁと思わされます。
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世界の終わり、あるいは始まり



ブックオフをぶらぶらしてて、何となく見つけてしまったのがこの本。
内容は小学6年生が銃を使用した連続誘拐殺人をやらかすという、かなり衝撃的な感じだったのですが、歌野さんだし、まあハズレはないかな…と思って購入しちゃいました。

で、実際は…そうですね。前半は面白くてどんどん読み進めたのですが、後半はビミョー…。
はっきり言ってしまうと、この話にオチはないです。

話は、前半も後半も、犯人の父親目線で進んでいきます。
近所で息子の友達が誘拐され、身代金が要求されますが、父親は自分の息子(や娘)が誘拐されたワケじゃないし…とどこか他人事。
しかし、息子の机の引き出しから、誘拐された少年の父親の名刺を偶然発見した所から、父親の頭に疑惑が生まれます。
その後も次から次へと、息子が犯人である証拠を発見していくのですが、肝心の息子には問いただせない。
一体自分はどうしたらいいんだろう…というところで前半は終わります。

後半は、もしこのままだったら我が家はどうなるのか…という父親の未来予想、というか妄想の繰り返しになります。
もし、警察が真相にたどり着いて息子が逮捕されたら…。
もし、父親が息子を疑っていることがバレたら…。
もし、真実が世間にバレる前に、自分がこの事件の隠蔽にかかったら…。


と、永遠に「もしも」の世界が繰り広げられ、そこはちょっとしつこいかもw
こういう重いテーマを描くなら、ちゃんと息子と向かい合うオチを用意して欲しかった…。


ただし、自分の身内がもし凶悪犯人だったら…ということは、いろいろと考えさせられます。
私に子供はいないけれど、本当に子供が、こんなことをやらかしたら、どう償えばいいんでしょうね。。。

例の父親も、息子が逮捕される妄想の中で、そのことを考えます。
被害者のご両親にはどう謝罪すればいいのか。
4件も誘拐殺人をやらかしているのに、賠償金は払いきれるのか。
とにかく普通に考えたら、とうてい許してもらえることではない。
ではボランティアをしたり、仏門に入ればいいのか。
そして、まだ幼い娘の将来はどうなるのか…と。
大体今勤めている会社だって、絶対クビになるに違いない。
そして当然、その後の再就職は絶望的…。


読みながら、何となく、かの「酒鬼薔薇事件」を思い出しました。
きっとあの両親も、途中から薄々息子のことに感づいていて、警察が家に来るその瞬間まで、自分たちはどうするべきなのか、これからどうなるのか、悩んでいたのかもしれません。

タイトル「世界の終わり、あるいは始まり」の意味が、最後になって分かります。
息子が誘拐殺人犯人だなんて、もう世界の終わりだ!
しかし本当の終わりはそこではない。世界の終わりはこれから始まるのだ…。


個人的には、このテの小説で、被害者(の家族)側や、加害者本人の側から、あるいは警察の側から描く話は珍しくないと思うのですが、加害者の肉親からという目線は、ちょっと新鮮でした。
後半の展開を考えると、余りアタリとも言えないですが、大ハズレでもないなーというのが正直な感想です。

これから読む人は、図書館で借りることをオススメしますw

初ものがたり



1999年に新潮社から出ていた初ものがたりが、今年の7月にPHP文芸文庫から完本として出版されていたらしいですね~。
本屋をのぞいたら、懐かしい本が山積みになっていて、ちょっとびっくりしました。
完本は、以前新潮社から出ていたものに、3つのエピソードを付け加えて出版したとか。。。

この初ものがたりは、江戸時代を舞台に、本所深川一帯をあずかる「回向院の旦那」こと岡っ引きの茂七が、子分の糸吉や権三らと難事件の数々に挑む物語で、短編集になっているので、とても読みやすい。
いや、読みやすいのは、短編集だからではなく、宮部さんの文章だからか。
とにかく、この時代のことなんか歴史の授業程度の知識でも、すらすらと読め、いつの間にか江戸の下町にどっぷり浸かってしまうのです。
※これは初ものがたりに限らず、宮部さんの江戸もの全般に言えることですがw

お店を「おたな」、手下を「てか」と自然に読めるようになり、薮入り(やぶいり)、差配人(さはいにん)…という言葉がすっかり頭に馴染んでしまえば、もう宮部江戸ワールドの一員(私含むw)!

そして初ものがたりが他の宮部さんの江戸ものと違うのは、各章ごとに美味しい食べ物が登場すること。
最初の章で、町に現れた稲荷屋の屋台の親父。この人が謎の人物で、元はお侍さんらしいが、一体どういう筋の人なのか(作中結局名前も出てこなかったし最後まで正体不明…)!?
店を出すと必ずショバ代をもらいに来るヤクザの勝蔵ですら、すごすご逃げ帰る始末で、茂七も事あるごとに気になるものの、なかなか素性を聞き出せない。
その屋台では、名前通りお稲荷さんがメインなのですが、他にもいろいろと美味しそうなものが沢山出てきて、空腹の時間に読むのは、精神的によくないですw

しかもよく考えてみたら、この時代、一部の雲上人をのぞけば、庶民が食べていたものは、ほぼ「地産地消」。産地偽装なんてあり得ない。
また、冷蔵、冷凍技術もないし、缶詰もないし、ハウス栽培もないので、食べ物は全て季節のもの。その季節に食べられるものだけを食べていた時代だったんですよね。

もちろん現代の私は、その技術の恩恵を十二分に受けている立場なのですが、この時代のこういう食事も悪くないよなぁ~なんて思ってしまったりして…。
※ただし現実的に考えて、この時代で自分が暮らせるとは思えないわけですがw


ところで、宮部さんの江戸時代もの、これがあまりに上手く出来てて、ついこれが本物の歴史小説のような気がしてしまうのですが、鵜呑みにするのはどうも危険らしいです。

というのも、江戸時代の研究家杉浦日向子さん(2005年没)の著書によると、まず岡っ引きという言葉は、いわゆる蔑称で、要するに先生を不良が「センコー」とか呼ぶのと同じようなことだとか。
つまり、自分で「岡っ引き」と言うことはあり得ないし、本人に岡っ引きと言うときは、相手にケンカを売る時。少なくとも親しい相手や尊敬する相手には「岡っ引き」とは言わないとか。
最初に作品の紹介で「岡っ引きの茂七」と書いてあるのは、本の裏の紹介文からの引用で、本文中にもちょくちょくこの言葉が出ますが、表現としてはおかしいと思いながら読んだ方がいいのかも。

それから途中「薮入り」という言葉を出しましたが、これも、当時は上方(関西)で使われていた言葉だとか…(でもwikiではまた違うことが書いてあるなぁ~。個人的には杉浦さんの説が正しいと思いたいですが、最近また説が変わったのでしょうか?)。


ま、そんな細かいことはともかく、とりあえず読んでみることをオススメします。

顔 FACE



「一人警察モノ」とか呼ばれるくらい、警察小説ではあらゆるジャンルに長けている横山秀夫ですが、この本は鑑識課で似顔絵を担当していた平野瑞穂が、一年前にある事件をきっかけに似顔絵が描けなくなり、半年の休職の後、広報へ異動。心の傷を治して再び鑑識へ戻るまでの話が短編集としてまとめられています。
※「ある事件」は前に出た短編集「陰の季節」の中の「黒い線」に詳しく掲載されていますが、未読でも最初にその事件について触れているので大丈夫です。

犯人の似顔絵…というのは、事件が起きるとテレビなどで見かけますが、その内情を読むのは初めてだったので、描く側の苦悩やスキルは、この小説で初めて知りました。
短編集ですが、主人公瑞穂が、徐々に自分を取り戻していく過程は、まるで長編小説のよう。


ところで、私は最初図書館で単行本を借り、その後文庫本を購入したのですが、単行本と文庫本で違う箇所発見!
※作家さんによってはよくあることらしいですね?この著者はどうなのか分からないのですが…。

話は思いっきりネタバレになりますが、第4話目の「共犯者」。

この話は、銀行の支店に対する防犯訓練が主題になっています。
訓練とはいえ、事前の予告は支店長のみ。犯人役は本気で支店に押し入り、本気で行員を脅し、本気で金を奪って逃走!どこまで打ち合わせ通りに出来るかを見極める重要なデモンストレーションなので、やる方も一切の手加減ナシです。

ところが、以前の訓練にて、余りの恐怖に失禁してしまった女性行員が…。
彼女は短大出て一年目。年頃の女性が大勢の前で失禁したという事実に耐えられず退職、その後失意から立ち直ることなく病死します。
そして彼女の祖父が警察と銀行に復讐する為、たまたま手に入れた防犯訓練の情報を利用して、同じ時刻に同じ銀行の別の支店に強盗をしむけ、警備の手が訓練に集中していた警察に恥をかかせます。

祖父は、(訓練予定の)支店近くにある若者向けのショップで洋服を見ながら、訓練が始まるタイミングを図っていましたが、後にその不自然さに気づいた瑞穂が一人で祖父の住むアパートに説得に行きます。

結局警察も少し遅れて事実にたどりつき、瑞穂の説得中にアパートに到着するのですが、瑞穂はドアを押し破られる前に自分から外に出て欲しいと最後の説得をし、祖父もそれに従うのですが…。

最後、瑞穂にかける言葉が単行本と文庫本で違っているのです。
単行本では「あんたは真由美(孫)によく似ている」(というニュアンス。すみません読んだのずっと前なのでうろ覚え…後で確認します^^;)。
そして文庫本では「あの店(訓練開始まで待機していたショップ)には、真由美に似合いそうな服がいっぱいあった」になっています。

当然文庫の方が後から出版されたので、単行本を出した後、文庫本の文章に直した…ということなのですが、何故直したのでしょうね?

ニュアンス的には、単行本の場合は、瑞穂を通して孫の姿を見たように取れますが、文庫本だと瑞穂と関係なく孫のことを回想しているような雰囲気です。

祖父は説得に来た瑞穂に、孫についてこう語ってます。
「真由美はいい子だった…。あんないい子はいなかった…。純真で優しくて、それに、大きくなっても年寄りを馬鹿にせず、真っ直ぐ人を見つめる子だった」

このセリフの人物像は、涙ながらに祖父を説得をする瑞穂の姿に少し被ります。
だから個人的には、単行本のバージョンの方が私は好きなのですが…。

ただし、失意のまま病死した女性と、失意から立ち直る過程にいる瑞穂は、全く別の人物である。だから二人は似ているはずがない…と言えるような気もします。
ひょっとしたら、横山さんはそういうことを考えて、セリフを変えたのかもしれません。

どちらにしても真実は分からないんですけどね。

オリンピックの身代金



今朝、2020年オリンピックの開催地が東京に決まって、日本中のメディアがバンザイしている最中ですが、こちらのオリンピックは、前回、昭和39年の東京オリンピックが開催されるまでの東京の光と影を描いています。

主人公は、兄を某建築現場の飯場でなくした、東大院生島崎。
彼は兄の死因を心臓発作だと聞かされますが、納得できず、夏休みを利用して兄のいた現場でアルバイトとして働きながら死の真相を探ろうとします。
その現場は想像を絶するキツさなのですが、徐々に仕事や仲間にも慣れてきた頃に、真相がわかります。
真相が分かった後も、彼はそこで仕事を続け、そして、兄と同じ闇に入っていくのですが…。

話は、時期を前後しながら、飯場の島崎や周辺の人々と、オリンピックの開会式会場に爆弾をしかけたという脅迫状を受け取り、警備を強化していく警察、そしてオリンピックの恩恵を存分に受ける富裕層etc、様々な人の目を通して、運命の開会式に突入していきます。

東京オリンピックという史実を元にしているので、結果的に開会式から閉会式まで無事終えたことは分かりきったことなのですが、それでも中盤以降、テロは成功するのか?とはらはらさせられます。


私は東京オリンピックの10年以上後に生まれているので、話しか知らないのですが、私の親世代の年齢をそれとなく探るには「東京オリンピックの時何歳だったのか聞くのが一番手っ取り早い」と聞いたことはあります。
それくらいインパクトのある行事で、日本全国民の誰もが、何らかの形で関わった行事だったのでしょう。

この本を読むと、そのことがひしひしと伝わってきます。
敗戦した日本にとっては、世界に復活を知らしめる「国家の威信をかけた行事」だったんですね。


ただしその影には、まだまだ貧しい人が大勢いて、全般的にそういう人たちの命は非常に軽かった。
オリンピックの成功は、大勢の人柱の上に成り立っていたことも忘れてはいけない。

島崎の兄と同じ現場で、兄と同じ原因で亡くなった男の未亡人が故郷の秋田から遺体を引き取りにきて、一日だけ島崎と東京観光をして帰りますが、帰り際の「東京は祝福を独り占めしている」という言葉が重くのしかかってきます。
そしてその一言が、島崎の人生を変えてしまうのです。


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