あなたは幸福ですか?
幸福でない方は、パーカー・パイン氏にご相談下さい。こんな広告を新聞に出し、依頼人を“幸福”にするために、あの手この手を駆使する
何でも屋、パーカー・パイン。
大柄で頭は禿げて、目は小さく、度の強い眼鏡をかけたパイン。
訪れた
不幸な依頼人は、何故かこのパインの穏やかな微笑みを見ると一瞬で気を許し、自分の悩みを相談し、大金を払って幸福を手に入れようとします。
クリスティの作り出した探偵といえば、ポアロやミス・マープルなどが有名ですが、このパインもなかなかの名探偵。
35年間、官庁で統計の仕事をしてたという経歴から、統計的に考えることを得意とし、依頼人の様子を見て一瞬で悩みを当ててしまうとこなんか、ちょっとホームズっぽいw
話は全部短編になっているし、毎度特徴的な依頼人が登場するので、飽きません。
全編12話。そのうち最初の6話は事務所に依頼人が訪れる形式で、残りの6話は、中東を旅行するパインが、ツアー客のトラブルを解決する形式になっています。
私は最初の6話の方がどちらかというと好きなのですが、評価を見ると後半の方が面白いという人もいて、この辺りは好みの問題なんでしょうね~多分。
作者まえがきによると、クリスティのお気に入りは
不満な夫の事件と
金持ちの夫人の事件で、訳者あとがきによると、訳者の高評価は
シラズの館だそうです。
私もクリスティと同じく、
金持ち夫人の事件がお気に入り。
この話は、
大金持ちの未亡人が依頼人になるお話ですが、夫婦共に貧しかった若い頃を得て、商売が成功し、莫大な財産を作りあげたライマー夫婦。
ところが夫が死去し、子供もなく、お金だけを有り余るほど持っている未亡人は、そのお金で自分を幸せにしてほしいとパインの事務所に相談に来ます。
欲しいものはすべて手に入れられるけれど、何も欲しいと思わない。
しかし苦労して得た財産は、寄付なんかせず、全て自分のために使いたいというライマー夫人。
そこでパインは、ある作戦を実行しますが…。
最後に、ある行動を決断したライマー夫人に対して、パインは
「あなたのように振舞う女性は、千人に一人しかいますまい」と、作中最大の賛辞を贈ります。
人間の幸せとは何なのか…を、ちょこっと考えさせられますが、私がライマー未亡人みたいな悩みを持つことは一生ないだろうなww
ところでこの本、創元推理文庫の方は絶版みたいですが、ハヤカワ文庫の方は現在も新刊で手に入るようですよ。
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