湊さんの本は以前「告白」を読んだことありましたが、余り記憶もなくそれっきり。
で、図書館で次の本をぶらぶら探しているときに、「今日返ってきた本」の中に見つけて、衝動的に借りてみたのがこの本です。
※この「今日返ってきた本」は結構本を選ぶときの参考になります♪この本は三つの短編が収められていて、どの短編も、基本的には
二人の人物の手紙のやり取りのみで話が進んでいきます。
手紙…というツールが何だか懐かしいですね。
今やメールどころか、一言ずつ簡単にやり取りするLINEなんてものが出てきているし。
手紙は相手に届くまでの時間、相手が返事を書くまでの時間にブランクがあるのが、ポイントです。
相手が、政情不安の海外にいれば、相手に届くにも時間がかかるし、返事が届くにも時間がかかる。
国内であったとしても、相手が読んで気持ちの整理をつけて、あるいは書く時間が出来て返信が来るまでの時間を、ひたすら待たなければならない。
メールやLINEで、言いたいことが一瞬のうちに相手に届くやり取りが、ほぼ当たり前になり、「既読無視」なんて言葉まで出てくる現在、この「待つ」という行為をしなくなったような気がします。
最初の話
「十年後の卒業文集」では、昔の高校の部活動の仲間うちで起きた恋愛模様と、その後のトラブルが描かれています。
高校生の男女が長いこと活動をしていれば、まあいろいろありますよね。自分にも覚えがありますから彼らの気持ちがよく分かる気がしますw
今となってはひたすら懐かしいばかりなんですけどね。
二つ目の話
「二十年後の宿題」は、少し重い話が出てきます。
小学校の先生(女性)が、休日に自分のクラスの子6名(男女3人ずつ)に声をかけて、学校で使う落ち葉を拾いに近くの山に出かけていきます。
先生のご主人も一緒に、みんなで楽しく落ち葉を集めた後は、お弁当を食べて、バドミントンと沢遊びをするメンバーに分かれました。
が、沢遊びをしていた男子1名が川に落ち、助けようとしたご主人もおぼれてしまいます。
結果、男子は助かりましたが、ご主人は亡くなってしまうのです。
先生は、昔の教え子大場敦史(この時のメンバーではなく、メンバーの知り合いでもない)に、あの時の6人が20年経ってどんな人生を歩んでいるのかを調べて欲しいと依頼します。
依頼された大場は、調べていくうちに、6人+先生夫婦が、それぞれ違う思惑で例のイベントに参加し、事件に巻き込まれ、その事件を何らかの形で心に抱えたまま大人になっていたことを先生に報告していきます。
実際川におぼれた子、そのきっかけを作った子、川の側でその様子を最初から最後まで見ていた子、先生に状況を伝えに行った子、先生に頼まれて救急車を呼びに行った子、そもそもこのイベントが企画されるきっかけになった子…etc
最終的に、何故先生が大場敦史にこの依頼をしたのかという事情まで明らかになるのです。
個人的には三つの中で、この話が一番オススメかな~。
最後の話は
「十五年後の補習」。
中学の同級生同士から始まった、29才のカップルですが、男性側が政情不安の国にボランティアに行ったことをきっかけに、文通を始めます。
文通の中で、中学2年の時に起きたあるイジメ問題と、それに付随して起きたある放火事件が話題になり、手紙の中で本音と真実が明らかになっていきますが…。
どの話も「手紙」だからこそ、成り立つ話なんだろうなぁと思わされます。
メールやチャットのように、行ったり来たりが一瞬だったら、あるいは、顔を合わせて会話してたら、多分本当の話は見えてこないのかもしれません。
とはいえ、本にあるような、あんな長~い手紙、よく書いたよねぇ…(特に一つ目の話はほぼ手書きという設定w)とは思いました。
ここ何年も手書きの文章なんて書いてないので、考えただけで腕や手が痛くなりそうです!
それから…最初の話のオチ、面白かったけど、あれはやっぱり無理があると思うw
3年一緒に活動してたメンバーなんだし、成長したとはいえ、絶対みんなに気づかれるのでは!?
PR