ちょうど大河ドラマ「篤姫」をやってた頃、書店にこの本が山積みになっているのを見て興味を持ち、ほとぼりが冷めてから図書館で借りて読み、その後購入しました。
非常に重厚で、格調高い描写が特徴的で、
女性視点の「幕末」が隅から隅まで描かれています。
主人公篤姫は、薩摩藩島津家のこじんまりした分家に生まれ、島津斉彬に才覚を見出されて島津本家の養女になり、13代将軍家定の妻「将軍御台所」となりますが、すぐに家定は死去。その後幕末の動乱に巻き込まれます。
この辺りは史実かどうか分からないのですが、篤姫は嫁ぐ前に養父島津斉彬に重要な
密命をうけて徳川家に入ります。
が、その密命は、斉彬の陰謀を成功させるための複線だった…。
尊敬していた養父の本心を、篤姫が悟るシーンは、読んでいるこちらも驚愕しました。
この時代の女性は権力を維持する道具にすぎず、幕府が終わりそうな動乱のさなかも、大奥には情報はほとんど入ってきません。
でもその中で篤姫は、自分に出来ることを精一杯やって、最後は城を後にするのです。
私が気に入っているシーンはこちら。
篤姫は、分家から島津本家の養女になり、「将来の将軍御台所候補」として、教育係の幾島から厳しくしつけられるのですが、一番最初に幾島は、篤姫にこんなことを言います。
「上に立つひとは、先ず第一に、はっきりとよく判るように仰せ出さなければなりませぬ。
家来というものは、『え?』などと聞返すことは叶いませぬ故に、あいまいなご発音をなさいますれば、家来は困り入ります。
低い声でつぶやいたり、一人ごとも固く戒められております。
また、二度おなじことをおっしゃられてはなりませぬ。殿さま奥方さまのご命令は、口から出ましたときは絶対でございます。いまのは嘘じゃ、とはどんなことがあっても仰せにはなれぬものでございます。
それ故、一旦、お口になさいましたことはきっと実行なさらねば、家来どもの信頼を失います」上に立つものの重要な心得ですね。
失言の多い現代の政治家も、幾島の教育を受けた方がいいのでは?と思ったりしてw
篤姫はこの頃、出会ったばかりの幾島に反発して、この幾島のセリフの後も「あっそ!じゃあなたとは口きかないからねっ!」的なオトナ気ないことを内心で思ったりするのですがw、この言葉を篤姫はずっと忘れませんでした。
幕末、幕府の、江戸城の、自分たちの命が、いつどうなるか分からない中、大奥のみんなが浮き足立つ状況で、篤姫は遠い昔幾島に言われたこの言葉を思い出して、リーダーたる自分がうかつなことを言ってはいけないのだと、心を落ち着かせます。
幕末の物語といえば、坂本竜馬など、新政府(明治政府)側からの話も面白いですが、幕府側から見た幕末も非常に読み応えがあります。
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