ホームズものが他の探偵ものと大きく違うのは、違う作家によるパロディ作品が多く出版されていることではないでしょうか?
調べると、とにかくいろんな人が、パロディを書いているのに驚きます。
普通に自身の著作が有名な、エラリー・クイーンまで書いているしw(それはまたいずれ書く予定)
私が図書館で偶然見つけて読んだのが、J・トムスンのホームズシリーズ。
この人のホームズシリーズの特徴は、
「語られざる事件」を発表しているという点。
※トムスンの他にも「語られざる事件」を書いてる人はいますホームズを読んでいると、ちょいちょい出てくる
名前だけの事件。大抵過去を振り返って、
「そういえばこんな事件もあったね」的に出てきたりするのですが、名前からどんな事件なのか想像をふくらませちゃうのが、さすがマニアですな( ´艸`)
トムスンのこのシリーズは、原作のイメージに非常に近くて、本当に雰囲気そのまま。
コナン・ドイルは生前、アイデアが思いつかなくて、他人のアイデアを買い取とろうとしたとか何とか言われてますが(真相不明)、当時トムスンがいたら、間違いなく影武者として採用していたんじゃないかしらww
何しろ、エピソードを思い浮かべた時、
一瞬どっちの作品だったか迷っちゃうくらい!
で、現在日本で出版されているのが、上の4作で、あと2作出てますが、そちらは未翻訳。
せっかくだから出版して欲しいけれど、もう出ないんだろうなぁ~。
何しろ出版されている4作ですら、現在増刷されていなくて、もう古本でしか手に入らない状況。
案外
図書館で借りて読むのが一番手っ取り早かったりします。
(新しい図書館にはないかもしれないけれど、ちょっと古い図書館だと置いてある可能性大)
そうそう、このシリーズと原作の大きな違いは、原作に比べて「バッドエンド」の話が比較的多いということでしょうか。
※原作にもバッドエンドの話は存在します何しろ「事情があって当時は発表できなかった話」という設定なのですから、どの話にも何かしら「発表出来ない理由」が存在します。
よく出てくる主な理由としては3つ。
○依頼者側の事情
○ホームズの事情
○ワトスンの事情
どの話も、最後にこの3つの中のどれかの事情が語られ、
「そんなわけで、この話は発表しないで金庫にしまっておく」という感じで締めくくられるのが、トムスンバージョンのお約束。
※発表しないなら何でわざわざ書いたんだい、ワトスン君?という疑問は持っちゃいけませんwとまあ、これで大体紹介は終わるのですが、せっかくなのでそれぞれの本から1つずつエピソードを(ネタバレはナシで)紹介しましょう。
まずは
「秘密ファイル」の中から
アマチュア乞食。
ワトスンの軍隊時代の友人の息子は、教育の成果もなく、どうしようもないドラ息子(現代風に言うとDQN)。
そのドラ息子が、父親(友人)とケンカした挙句、家出してしまいます。
憔悴した友人の為に、何とかして行方を捜して欲しいと、ワトスンがホームズに事情を説明するのですが…。
原作の記述「アマチュア乞食」という言葉から、この話をよく思いついたねぇ~というのが、一番の感想ですw
そして19世紀のイギリスにもあった
振り込め詐欺(正確には寄付金詐欺?)。
欧米では独立した子供の為にお金を用立てるという発想はないらしく、日本のような
「父さん大変だ!横領がバレそうなんだけど何とかして~」的な詐欺は余り通用しないらしいですが、一方、お金持ちが恵まれない人のために寄付をする、或いは慈善活動をするというのは、割と一般的なことらしく、だからこの話のような詐欺が成り立っちゃうのかも?
次、
「クロニクル」の中から
ハマースミスの怪人。
ある嵐の夕方、ホームズとワトスンは、暇つぶしにミュージックホールに出かけます。
そこの控え室で女性歌手が殺されてしまい、犯人探しをすることになるのですが…。
たまたま観に行った劇場で事件だなんて、
何という名探偵コナン!wで、殺された女性歌手は、ワトスンが大ファンだったフランス人歌手。
「彼女は素晴らしい声の持ち主」と評するワトスンに対して、「素晴らしい
足首の持ち主」とか言っちゃうホームズww君の趣味って一体(爆)。
この話は、ホームズものには珍しい
色恋沙汰の密室殺人。
ドイルは非常に真面目な人だったそうなので、絶対思いつかないトリックでしょうねw
で、その次は
「ジャーナル」の中から
スミス-モーティマーの相続。
夫が失踪してしまったと、モーティマー夫人が弁護士を伴ってホームズの元を訪れます。
その夫は、のちに死体となって発見され、容疑者も上がるのですが…。
ハマースミスの怪人は密室ものですが、こちらはアリバイトリック。
ある身近でユニークなものが、トリックに使用されます。
本当に出来るかどうか実験したらしいですよw
しかし犯人も、証拠の品を自宅の近所で購入するなんて、バカですなww
最後、
「ドキュメント」の中から
エインズワースの誘拐事件。
ケチな金持ち、エインズワース氏が、娘のミリセントが馬丁に誘拐されたとホームズに相談に来ます。
その娘は、何故か洋服を全て残し、しかも、娘の愛馬も一緒に消えていたというのですが…。
こういう話に出てくる娘は、大抵美女と決まっていそうですが、
ミリセントは例外w
話が進むと、脳内のミリセントは
北斗晶辺りで再生されるようになります(超爆)。
そして娘が誘拐されたというのに、説明された調査料に対して「高いな」と文句を言うエインズワースwwwお前本当に心配してんのかいっ!
ところで、ワトスンは「アマチュア乞食」の際、調査料の目安が分からないと言ってますが、しょっちゅう身近で話を聞いているのに、全然目安つかないの~?
以上です~。
その他小ネタとしては、
原作の方のレビューでワトスンに対して
「感情を表に出してない感じ」と書きましたが、こちらのワトスンは、それなりに感情出しまくりww
某話にて、ホームズの調査が上手く行ってない様子を見て「今夜も機嫌の悪いホームズと過ごすのか…」と
あからさまにがっかりしたりw
かと思うと、その後調査が思い通りに進んできて、ワトスンも協力の為に
強制的に勉強させられた際には、「機嫌のいいホームズなら、一緒に過ごし易いというわけでもない」とか言ってるしww
そういう意味では、ただひたすらホームズを慕うドイル原作のワトスンに比べると、こちらのワトスンはホームズのいいとこ、悪いとこを全て承知の上で、友人として協力しているな~と伝わる気がします。
このシリーズを読んでから原作を読むと、二人の関係がちょっと補強されるような気がしたりして。
では最後に、「ドキュメント」の中のフェラーズ文書事件の中からこの言葉を…。
「どんなに賢い人間でも、きっと一度や二度は愚かなまねをするものだと思いますよ」
原文:I am sure even the best of us have acted foolishly at one time or another.これはホームズのセリフなのですが、彼が言うと説得力がありますね。
自分にも思い当たることがあったのかしら?と邪推してしまったりして…。
PR