依頼人が一旦引き上げた後、ワトスンも仕事に戻り、家でメアリと夕飯を済ませた。
メアリはワトスンが夜出かけることに対して何も言わず、むしろホームズとの仕事を後押ししてくれた。
しかしワトスンは、メアリを心配させないように、ピストルを持参する必要があることは言わなかった。
221Bでホームズと共に水夫の変装を済ませると、馬車を拾って港へ向かった。
天気は霧雨が降っていて、とても湿っぽく、お世辞にもいい天気とは言いがたい。
その最中二人は、コルベットの待つルーシー・ベル号へと進んでいった。
約束の時間通りに船に到着して、コルベットの補助で甲板に上がると、早速用意してくれた船室に入って、コルベットは証言者となるディーキンを呼びに行った。
ホームズが用意したのは、仰々しい雰囲気のある公文書ぽい書類だ。
チャリングクロス街で手に入れたものらしい。
そしてディーキンが部屋に入ってくると、さっそくホームズが質問を始めた。
「ハリー・ディーキンさんですね?」
「ええ、そうですけど…」
何で呼ばれたのか分からないディーキンに対して、ホームズは3年前のソフィー・アンダーソン号の件について話を切り出した。
「そ、そんなこと何も知らない!」
ディーキンは始めしらばっくれていたが、ホームズが例の公文書っぽい書類に目を通しながら
「しかし以前亡くなったトミー・ブルースターが生前に弁護士に、一連の詐欺のこととビリー・ホィーラーのことを相談して書面に残していたんですよ。それでもまだ否定するんですか?」
と告げると、ディーキンはしぶしぶ真実を認めた。
さらにホームズがこう続けた。
「あなたはその日、別のことも目撃してますね。
海中にビリーの遺体を投げる前に、トーマス・コルベットと船長の間で何かやり取りがあったでしょう?」
「え、ええ…。コルベットに対して船長が自分の喉を手刀で切るそぶりを見せました」
「あなたはそのそぶりの意味を知っていますね?」
「……はい」
ディーキンはついに、コルベットが船長に何かについて脅迫を受けた瞬間を見ていたことを告白した。
しかし何故脅迫を受けたのかは、本当に知らないようだ。
ホームズはコルベットと船長のやり取りの本当の意味…つまりビリーがあの時まだ生きていたことを告げると、呆然として泣き出した。
その後、昼間にホームズから伝言を受け取ったレストレード警部が部下と一緒に船に乗り込み、船長他関係者を全て拘束した。
それから数ヶ月に渡ってソフィー・アンダーソン号の詐欺事件とビリー・ホィーラー殺人事件での裁判が行われ、船長は殺人を直接指示したということで絞首刑、トーマス・コルベットは詐欺その他もろもろで、懲役10年が言い渡された。
しかしコルベットは、持病の心臓病の発作で、刑務所に入ってから1年半でこの世を去った。
彼の望んだ結末とはいえ、ワトスンはコルベットの最期が哀れに思えてならない。
そんなわけで、この事件は発表しないでおくことにする。
●なんちゃって公式文書で簡単に騙されちゃうディーキン…。本当に古典的というか、超ありがちなトリックですね。似たような手法を
古畑任三郎とか
相棒で見たことあります。でもここのホームズの話の持っていき方は見事です(上のあらすじは短縮してますが)。ホームズって
詐欺師の才能もあるんじゃないかしらw
●最後一番びっくりしたのは、トーマス・コルベットの懲役!
10年って長すぎじゃないですかね!原文二回くらい確認しちゃいました…(°д°)殺人だって脅されてたんだし、受け取った保険金は返しただろうし…(彼の性格を考えると全額手付かずで置いてた可能性大)。そもそも
彼の告白がなければこの犯罪は露呈しなかったのではないのか!?さすがにもうちょっと考慮してあげようよ・゚゚・(>д<;)・゚゚・。
●そういえば
ひとりきりの自転車乗りで、ヴァイオレット・スミスに渡るはずの遺産を横取りしようとしたウィリアムスンとウッドリーがそれぞれ懲役7年と懲役10年。全ての計画を立てた悪党ウィリアムスンよりコルベットの方が長いなんて絶対変!!せいぜい禁固刑でしょう。ホームズも口添えしてあげなかったのかしら。
●ホームズがスコットランド・ヤードに行った時、レストレード警部は留守。事情もよく分からないのに
書置き一つでちゃんと時間通り部下を連れてきてくれるなんてすごい~。
●でもそんなレストレード警部「ホームズさんの要請じゃなかったらこんな天気の中来ませんでしたよ」とか「せっかく来たんだから深刻な事件じゃないと困る」とか言いたい放題wいやーよかったよかった!警部の望み通り
深刻な事件で!!(爆)
ということでこれで6つ目の話終了!
あと一つですよ一つ!!
しかしこの話も何だか長そうな雰囲気なので、また時間かかりそう~。
ちなみにこの本を買ったのは、2013年7月。ちょうど三年前です。
一冊読むのに三年以上かかった本なんて、人生で始めてかもしれません。
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