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これまで読んだ本、新しく読んだ本の感想を適当に書いていきます。 ※あくまで個人の感想です!
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コモリと子守り
櫻子さんの足下には死体が埋まっている
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事故―別冊黒い画集Ⅰ
死体置き場で夕食を
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しまのないトラ
Sherlock: A Study in Pink
シャーロック・ホームズシリーズ
シャーロック・ホームズ秘宝の研究
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小公女
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ずっとあなたが好きでした
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世界の終わり、あるいは始まり
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武田信玄(あかね文庫版)
地球進化 46億年の物語
冷たい川が呼ぶ
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トッカン 特別国税徴収官
トッカン The 3rd おばけなんてないさ
トッカン vs勤労商工会
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福家警部補の挨拶
ブードゥー・チャイルド
ホームズの伝記比較
ホームズ・パロディ(J・トムスン)
星新一のショートショート
「本が売れない」というけれど
ぼんくら
マスカレード・ホテル
マンガ版シャーロック・ホームズ
万能鑑定士Qの事件簿のシリーズ
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ミッキーマウスの憂鬱
密室殺人ゲーム王手飛車取り
密室の鍵貸します
みんないってしまう
モンスター
夜行観覧車
ラプラスの魔女
霊柩車No.4
ワイルド・スワン
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アーンズワース事件2/3

さて、前回の続きです。
ホームズとレストレードの城巡り開始~。
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アーンズワース事件1/3

せっかくKindleで便利になったにも関わらず、トスカ枢機卿の話からなかなか進まなくて、今回やっとThe Secret Notebooks of Sherlock Holmesの5つめの話に入りました。
タイトルはアーンズワース事件
(原題はThe Case of the Arnsworth Affair)

ということで、素人翻訳開始します。
※素人なので間違ってる箇所はごめんなさい~。

ずっとあなたが好きでした



図書館の返却棚で見つけた本ですが、タイトルを何気なく見て、それから著者を見たら何と歌野晶午さんじゃないですか!
歌野さんといえば、密室殺人ゲームとか、ミステリで有名な作家だと思うのに、このタイトルを見る限り、まさかの恋愛モノ?
いやいや、タイトルは恋愛と見せかけて、中身は違うとか…と本を手にとって裏表紙の紹介を読むと、何だか本当に恋愛小説のようで…。
かなり分厚くて読む時間結構かかりそうなのに、歌野さんが描く恋愛モノってどんな感じなんだろう?という好奇心が押さえきれず、つい貸し出しカウンターへw

短編集になっているようなので、とりあえず表題作から何も考えずに普通に読み始めましたが、確かに歌野さんらしい作品になってますね。
単純な恋愛モノと見せかけて、ちょっとひねってあったり、ミステリっぽくなってる話もあったり。
主人公はどれもみな男性のようで、小学生から、初老の男性まで、年齢は様々。

ふむふむと中盤まで普通に読んだ所で、ある仕掛けに気づきました。

あれ?これってまさか…!?と前の短編を読み返し、確認し、やっぱりそうだよねー!と疑惑が確信になったところで、この小説の種明かしをしている話が、最後から二つ目の短編錦の袋はタイムカプセル

なるほど、こういう仕掛けがあるとこが、歌野さんらしいですよね。
仕掛けが分かってから、再度読み返すと、面白さ倍増です。
最初は若干オチの凝った、ただの恋愛ものだと思ったのに、やられた!と思いました。

そんなわけで、思ったより楽しめた本なのですが、最後の短編散る花、咲く花は、ちょっと蛇足気味のような…。
タイトルとリンクさせたかったのかもしれないけれど、錦の袋はタイムカプセルで、十分意図は伝わると思うし。

とはいえ、久々に面白い本を読んだ気がします。
まあ今読み返したいかと言われると微妙ですがw

しばらく時間が経って、文庫が安く手に入る頃になったら、また読みたくなるかも?

ホームズの伝記比較



シャーロック・ホームズ物語といえば、何故かコナンドイルの本編以上にパロディが充実していることでも有名だったりします。そういう意味では、本編を読み終わった後も、違う人の書いたホームズを読める楽しみがあるということで、ファンにはうれしいことなのですが…。

そんなパロデイの中でも、ここではホームズやワトスンの生涯を伝記のように描いた二冊の本を比較しながら紹介していきます。

まずは古典的とも言えるW・S・ベアリング=グールド著シャーロック・ホームズ―ガス燈に浮かぶその生涯
ドイル著のホームズ物語は、物語の発表順(本の発行順)=事件の順番でないことは有名な話で、じゃあ本当はどんな順番だったのかというのは、常にファンの心を悩ませ、マニアの探求心をくすぐるものらしいですが、現在基本の順番とされているのは、この人の著作が基準になっているようです。

そして、この本から数十年後の2001年に発売されたのが、J・トムスン著ホームズとワトスン。ベアリング=グールドの説の他、様々な説を上手く取り入れながら、新しいホームズの伝記を作り上げたと言ってもいいでしょう。


では早速この二冊を比較してみます。

最初に本の基本的スタイルの違いから。
ベアリング=グールドverは、タイトル通りあくまで描くのはホームズのみです。ワトスンのことも語られてはいるものの、パートナーとして、付随的に触れられているような雰囲気です。
一方トムスンverは、これもまたタイトル通り、両方同じように人生を追っています。ワトスンの子供時代はどんなだったのか、趣味趣向はどんな感じか…などなど、そういえばワトスンの人生についてちゃんと触れている本ってちょっと珍しいかもと思いました。

次に、事件の発生した順番について。
ベアリング=グールドverは、あくまで事件簿に描かれた供述に従っています。これに従うとワトスンの結婚の記述とか、いろいろおかしな部分も出てくるのですが、そこはいろいろと想像をふくらませて、上手いことつじつまを合わせてあります。
一方トムスンverは、事件簿に描かれた供述を踏まえながら、これはワトスンの記憶違いや書き間違いではないか?という考察をしつつ、不自然にならない順番に並べ替えているような印象です。

例えば、原作では、四つの著名で、ワトスンはメアリ・モースタンと知り合って結婚し、ボヘミアの醜聞で、結婚後久しぶりにホームズの下宿を尋ねる…というストーリーになっていますが、日付をよく見ると、ボヘミアの醜聞の起きた日は、四つの著名より前であるという奇妙な矛盾が生じています。
ベアリング=グールドは、この矛盾について、あくまで事件はこの順番で起きたものとして、ワトスンはメアリと出会う前に違う人と結婚して、その後死別、それから四つの著名でメアリと出会って再婚した…という風に解釈していますが、トムスンは、原作に書いてあるボヘミアの醜聞の起きた日付1888年の方が間違っていて、実際は1889年だったはずと解釈し、ワトスンはあくまでメアリと出会い結婚してから、この事件が起きたのだと主張しています。

↑ホームズ物語は全編通してこの手の矛盾が非常に多いです。有名な赤毛組合なんか、同じ話の中で日付のおかしい部分があるしw
ドイルの担当編集無能すぎ…というか、仕事してなかったんじゃないのか!?
とはいえ、某エヴァと一緒で、不完全だからこそマニアにとっては探求しがいがあるのかもしれない…と思ったりして。


結論を述べると、ベアリング=グールドverは原作の記述に忠実に従い、トムスンverは原作の雰囲気に忠実に従っている…ということでしょうか。
どちらが好みかは人それぞれですが、私は個人的にはトムスンverの方が原作のホームズやワトスンの雰囲気に合うような気がしています。
ワトスンがメアリと出会う前に違う人と結婚してたなんて、やっぱりちょっと違う気がするし、きっと原作を書いたドイルもそんなこと考えてなかったような気が…。
ベアリング=グールドverは、読み物としては面白いけれど、発想が飛躍しすぎな印象もあります。
ホームズとマイクロフトの上にさらにシェリンフォードという兄がいたなんて、ほとんど妄想だしw

とはいえ、好みは本当に人それぞれだし、二冊を読み比べるとかなり面白いです。二人とも細かいとこよく調べるなぁーと感心すること間違いなし。
ちなみにBBSのシャーロックの製作者も、ベアリング=グールドverを参考にしているようなので、一読しておくとより楽しめそうです。
(特にS3E3最後の誓いに出てくるホームズのフルネームとか、マイクロフトが語るもう1人の兄弟の存在とか…)

小公女



世界名作劇場でもストーリーの陰湿さが際立ってた小公女セーラ
何でも、ラヴィニア役とミンチン先生役の声優さんが、「こんな役は二度とやりたくない」と言っていたとか何とか…。
文庫本は、大人になってから古本屋で見つけて購入しました。
そこで初めて知ったのですが、原作のセーラとアニメのセーラって、印象が大分違いますね。
アニメの方は、本当に完全無欠な聖少女という印象でしたが、原作のセーラは結構怒りの感情を出すし、時には自分の醜い感情と向き合うこともあります。
何というか、原作の方が人間らしいです。

ところでこの話は、ストーリーが有名で、全く話を知らないという人は少ないでしょう。
なのでちょっと変わった視点でレビューしてみたいと思います。


私がこの本を購入したのは古本屋だったため、初版は昭和27年。
翻訳の伊藤整さんは、あとがきも書かれています。

で、そのあとがきの一節↓
このお話は、いい子どもが悪い学校に入ったために起こる悲劇です。

別にセーラがいい子どもではないとかではなく、私が引っかかったのは悪い学校という部分。
確かにミンチン先生はセーラにひどいことしたけど、ミンチン女学院ってそんなに悪い学校だったのか?という疑問が…。

その辺、ミンチン先生のことを含めて考察してみたいと思います。

まずミンチン先生ってどんな人なのか。
ここで考えるのは人となりではなく、どんな階級の家に生まれ育ったのかということです。
何しろ当時のイギリスは完全に階級社会ですからね。
生まれた階級によって、受けた教育、その後の人生は全然違います。

ヒントになるのは、セーラが初めてフランス語の授業を受けるシーン。
ミンチン先生は、セーラが「フランス語を勉強したことがない」というセリフを「フランス語が苦手」と勝手に解釈した後、実はセーラはフランス語がペラペラだと判明して、大恥をかく…という場面ですが、ここでミンチン先生はフランス語が出来ないことがコンプレックスだと書かれてます。

この時代、文化の中心はフランスで、それなりの階級の人にとってはフランス語は必須でした。
アッパーミドルクラス(上位中産階級)の家庭に育ったと言われるシャーロック・ホームズもフランス語は堪能で、会話の節々にフランス語を引用してたし。

ミンチン先生には妹のアメリアもいますが、正直アメリアもフランス語が出来そうな感じはしません。というか、頭もよさそうではないしw

そこから推察出来ることは、二人はさほど知的な家庭で育ったのではないということです。
まさか労働者階級ではないと思うけど、中流でも下層の方だった可能性は十分あり得るのでは?
だとすると、実家の資産はアテに出来ず、その上で学校を設立するのは大変な苦労だったのでしょう。
ミンチン先生は、かなりお金にがめつく、いつも損得ばかり考えていますが、学校の経営はきれいごとでは出来ないだろうし、ここまでくる苦労を考えるとそうなるのも仕方ないような気もします。

さて、そんな苦労の末に設立されたと思われるミンチン女学院ですが、評判の方はどうだったのか?
本を読むと、セーラが来るまではさほど悪くはなかったように思います。
まず、そもそもセーラがここに入学したきっかけは、父親の知人のメレデス夫人の推薦によるもので、夫人は自分の娘ふたりがここの卒業生であることから、父親に推薦したと書かれてます。
娘がだらしなく育っていたか、あるいは娘からの評判が悪ければ、誰かに推薦するとは考えられません。
それから、セーラの親友アーメンガードの父親は学者で、相当な知識人だと書かれてますが、そういう人がミンチン先生を信用して娘を預けたというのも、学院の評判をさぐるヒントになりそうです。

一方セーラの方もちょっと考察してみましょう。
セーラは生まれた時に母親が亡くなり、家族は父親のみ。父親が亡くなった時の代理人バロウ氏の説明によると、親族もいないようです。
が、かなりのお金持ちで、インドにいる時は豪邸で、常に召使いがいたと書かれています。
セーラと父親の運命を変えるダイヤモンド鉱山の開発も、お金があったからこそ出来たことです。

で、そこでちょっと疑問なのは、何でそんな金持ちなのか?ということです。
父親は大尉ですが、大尉の給料だけでそんな生活ができるとは思えません。
ひょっとしたら小公子のセディの父親のエロル大尉みたいに、貴族の次男か三男という可能性もありますが、それなら父親が亡くなった時、親族が一人もいなかったというのは不自然。

ただ、本文に父親はイートン校出身だと書かれていますが、イートン校といえば、貴族の子弟が通うような名門校なので、それなりの家庭出身だったのは確実です。
しかも父親がもし長男なら家督を継がなければいけないわけで、大尉としてインドで暮らしてたなら長男ではない。家督を継ぐ長男だけでなく、次男以降もイートン校に通えたということは、実家はそれなりどころか、相当の資産家だったはずです。
本文中にも「世間知らずなとこがある」という感じの文があるので、家を出る代わりに資産を少しだけ(それでも普通に暮らしてれば生涯不自由しない程度の額w)渡されたというのが妥当な推測かも。

そういえば父親が亡くなった時、母親の方の親族も見つからなかったんですかね。
バロウ氏は、原作のあの様子だとちゃんとその辺調べたか怪しいもんです。
そう考えると小公子のドリンコート伯爵付きの弁護士ハヴィシャム氏は、ニューヨークの片隅にいるセディ親子を見つけ出したのだから、超有能です。
ミンチン先生も、少しでもセーラにかけたお金を回収したかったのなら、本気でセーラの親族を探せばよかったのに…。
父親の出自を考えると、セーラの学費程度を負担してくれそうな親族の一人や二人、絶対いたと思うんですけどね~。

…まあお金に関する話はともかく、裕福な家庭に生まれ育ったことが伺えるおっとりした上品な性格、勉強好きで読書好きなセーラ。
どちらかというと、子どもに過度な贅沢をさせないという中流~中の上くらいの家庭で育った生徒の多いミンチン学院の校風には、イマイチ合ってないような気もします。
※セーラが来る前は「いい洋服を沢山持ってて一番目立つ生徒」だったラヴィニアの母親ですら、子どもは簡単なものを身に着けるべきという方針だったと作中に書いてあります。
※アニメでは、セーラが使用人になった後、ラヴィニアが特別寄宿生になっていますが、原作でそういう記述はありません。

父親も、夫人の言うことを鵜呑みにせず、セーラの気質や自分の家庭に合った学校に入れればよかったんですよね。
あるいは、郷に入れば何とかで、身なりを周囲に合わせて地味目にさせて、特別寄宿生にせず一般の生徒と同じように教育して下さいとミンチン先生に頼んでおけば、後にダイヤモンド鉱山からみで無一文になった時、先生もあそこまで暴走しなかっただろうに…。

ミンチン先生の中盤~後半の暴走は、必要以上にセーラにお金をかけ、気を遣いすぎた反動だったのではないかと思うのです。


そう考えると、ミンチン女学院を悪い学校と切り捨てるのはちょっと違うような気がします。
セーラにとっては合わなかったかもしれないけれど、ミンチン女学院にとっても、セーラさえ入学してこなければ、余計な騒動に巻き込まれなかったのではないでしょうか。

そんなことを思いながら改めて小公女を読むと、また一味違った解釈が出来るかもしれません。


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