昔NHKでドラマ化したのをたまたま見て、原作が読みたくなり購入した本です。
新潟の旧家、蔵元の田乃内家の一人娘烈(れつ)の誕生からスタートし、烈の成長と、周囲の人々、あるいは田乃内家の歴史をつづった、壮大な小説になってます。
田乃内家の一人息子、意造の所にお嫁にやってきた賀穂は、体が弱く、子を何人も出産するが皆死産か早世してしまい、なかなか跡継ぎが生まれない。
そこでようやく生まれ、育ったのが
烈。
養育係として田乃内家にやってきた賀穂の妹
佐穂と共に、何とか成長したが、小学校に上がる前に
目の病気を患い、いずれ失明することが判明してしまい、その後母親の賀穂も体を壊して病死。
と、同時に蔵の方でも
存続の危機に見舞われたり、意造が
30才以上年下の芸者と再婚しちゃったりと、烈と佐穂の周囲は波乱万丈。
しかし、最初は目の病気ゆえに甘やかされてきた烈が、その波乱万丈を得て、次第に自分の生きる道を見出していくのです…。
とまあ、こんな感じであらすじを書きましたが、この話の主役、
烈じゃなくて佐穂の方でしょ!?と強く思いました。
強いて言うなら、裏主人公。キーパーソン。
普段はおとなしく、誰にも反発することのない佐穂ですが、肝心な場面…特に
烈に関わる重大な局面では、家長の意造を圧倒するほどの説得力を発揮するのです。
こう言っちゃあ何だけど、体の弱い賀穂でなく、佐穂の方をお嫁にもらっておけば、田乃内家も安泰だったよねーとか思っちゃいますが、それじゃ物語にならないので仕方ないかw
それにしても、この時代の男性は、ものすごい権力を持っていましたが、同時に責任感もすごかったのだなと思わされます。
意造は賀穂亡き後、30才以上年下の芸者
せきと再婚して、最初は跡取り息子なんか誕生して上々だったものの、その息子を不幸な事故で亡くしてからは、せき(実は結構身勝手な女w)との間に深い溝が出来てしまいます。
が、それでもせきのすることに絶対文句を言わず、「一旦女房にもらったのだから死ぬまで女房だ」と、自分からは最後まで離婚話を出さないのです。
(もっとも意造の場合はその責任感が度を越して、せきを不幸にしちゃったんだけど…w)
そういえば私が何気に気に入ってるキャラは、後半ちょいちょい出てくる意造のいとこ(田乃内の分家)の
正博かなー。
烈に余計な見合い話を持ってきたとこはマイナスだったけど、その他重要なとこで結構いいアドバイスするんですよね~。
せきとの一人息子が早世して落ち込んでいる時には
「家が長く続けば夭折もあれば縄付き(犯罪者)も出してる」と励ましたり、一旦閉めた蔵を烈が再開することに関する相談の時には
「お前(意造)がいなかったら烈ちゃんは思うとおりに行動している」と、本当は意造もちょっと前向きになってた蔵の再開を後押ししたり、烈が蔵人(蔵で働く男性陣)の一人に恋しちゃって結婚したいということについては
「酒屋が真面目な蔵人を婿にとるのはもっとも理想的」などと、現実的なことを意見したり…。
それだけでなく、芸者出身のせきの化粧が濃すぎるときは、「言いにくいことだけど…」と、耳の痛い忠告もしてくれたり…。
意造は一人っ子だけど、こういう頼りになる兄貴分がいてよかったねぇと、心から思いますよw
ところで、宮尾さんの他の本は新装版ということで、リニューアル出版されているのですが、蔵はアマゾンを見る限り絶版?
あんな傑作が絶版なんてありえない~!是非リニューアルして欲しいです!!
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