奥田さんって、本当に幅広い作家さんだなーって思いますよ。
「最悪」「オリンピックの身代金」みたいな
社会派を書いたかと思いきや、
コメディみたいな小説も書くのだから…。
(しかも基本的に当たり外れの少ない作家さんだと思ってます)
今回紹介する3冊は、どちらかというとコメディかな?
伊良部総合病院の地下の奥まった場所にある謎の精神科医、
伊良部一郎&その助手マユミ。
言動も行動も、はっきり言ってヤブ医者としか思えないDr伊良部ですが、表立って病院に通えない、通いたくない、あるいは、通えなくもないんだけど、たまたま看板を見つけちゃった
奇妙な症状を持つ患者さんたちが、続々と彼の元にやってきて、効果不明の注射を打たれて帰っていきます。
もちろん、ただ注射されるだけでなく、一言二言の診察は受けるのですが、その診察がまた絶妙。
ほとんどでまかせだろうと思われるDr伊良部のセリフが、何故か患者の症状にクリティカルヒットしちゃったりするんですよね。
そして最初は全然信用してなかった患者たちが、だんだんDr伊良部に心を開き、最後は自分自身の症状と真っ向から向き合うのです。
真っ向から向き合う…なんて書くと、ものすごく真剣な物語のようですが、そこは奥田さんのコメディ。
患者さんが真剣になればなるほど、読む側は何故か笑いがこみあげてくるという、不思議な感覚を味わえます。
ただし、笑う前に我が身を振り返ると、これって人のこと言えないよなーと思うこともあったりして。
ときどきそんな瞬間にドキっとするのがポイントです。
では一冊ずつ、軽く紹介していきましょう。
まずはDr伊良部のデビュー
イン・ザ・プール。
この本は、デビューしたばかりということで、イマイチDr伊良部のヘンテコ具合が薄いかなぁ。
個人的なお気に入りは、第4話、
携帯電話のメールにハマって抜け出せない高校生、津田雄太が主人公の
フレンズ。
今の高校生ならLineなんでしょうけど、メールってとこが時代を感じますねw
私なんかまだガラケー&メールだけどww
この話、最後の雄太の本音がいいです。
友達はいた方がいいけど、自分を偽ってまで作るもんじゃないよねー。
読んでて何だか納得しちゃいました。
次は、直木賞を受賞した
空中ブランコ。
この中のオススメは、
ハリネズミかな。
バリバリのヤクザなのに
何故か先の細いものが苦手な、猪野誠司が主役ですが、全編笑いどころ満載…というか、最初から最後までニヤニヤしながら読めますww
特に最後、敵対する組の人物と対決するシーンが傑作!しかも思わぬ展開になっちゃうし。
テレビでヤクザ絡みのニュースを見るたびに、「この人も実は…」と思っちゃいそうですw
最後、ついにDr伊良部&マユミが東京から離島に赴任しちゃう
町長選挙。
この本は、最初の3話が、とある有名人をそれぞれモデルにしてて、最後の町長選挙は離島での話という構成になってます。
とにかく最初の3話のモデルになった有名人が、読めば誰だか絶対わかるようになっていて、
おいおいこれは本人たちから苦情が来なかったのか?それよりもよく出版社も出したよね。ヤバすぎじゃね?と思わざるを得ないような…。
1話目
オーナーは、ちょうどセ・リーグとパ・リーグを一体化するとかしないとか、やいのやいのやってた頃の話がモデルになってて、主役のオーナーのあだ名はナベマンw
2話目
アンポンマンは、ライブファストとかいうIT企業を運営する、若手社長が主役w
3話目
カリスマは、とにかく見た目に執着する40代の元宝塚女優白木さんが主役w
…何というか、
さりげなくモデルにするとかそんなレベルじゃないとこが、爆笑です。
しかもラストの離島の話では、Dr伊良部は町長選挙に振り回されっぱなしで、これまでやりたい放題だった彼もタジタジ。
そういう意味では、3冊の中で一番Dr伊良部が活躍してない本かもしれませんね。
でもまあ、面白いことには変わりないです。
私も精神的にやられることがあったら、Dr伊良部に診て欲しいかもなぁ。
きっと何もかもどうでもよくなりそうですw
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