杉浦日向子さんといえば、昔NHKでやってた時代劇コメディー
「お江戸でござる」の監修をしていたのを思い出します。
江戸の下町を舞台にした寸劇が終了した後、出演者に囲まれた杉浦さんが、話の内容について、ここは実際の江戸時代ではこうだった、ああだった、あるいは、ここは非常に上手に表現されていた…などなど。
専門家なのに、ちっとも専門家らしくない軽妙で優しい口調が印象的でした。
これは、そんな「お江戸でござる」の解説で語られた江戸の様々な風習を、あの時の杉浦さんのお話のまま一冊の本にしたものです。
杉浦さんは2005年にお亡くなりになっているのですが、これを読んでいると、まるで杉浦さんの優しい解説が聞こえてくるような気がします。
この本の解説にも書いてありますが、杉浦さんが普通の専門家と違うのは、専門家が現代から江戸時代を解説しているのに対して、彼女は、
江戸時代の目線から、現代の私たちに語りかけているのです。
また、本編の合間に語られるこぼれ話も面白く、中でも西洋との文化の比較がちょっと目からウロコ。
西洋のオペラやバレエは、貴族→庶民に降りてきたものですが、日本の歌舞伎は、庶民から生まれ、次第に武士や奥女中など、上の方に広まったのですね。
西洋文化は、戦争によって奪い、交じり合うハイブリッドな文化ですが、江戸の日本には戦争はなく、内部から発酵する熟成文化…という解釈もユニークです。
この本を読んでから、時代劇を見ると、いろいろ突っ込み所満載ですね。
例えば今NHKでやってる
鼠、江戸を疾る(NHK木曜時代劇)では、毎度蕎麦屋さんが出てきますが、そのお蕎麦の食べ方が微妙…。
江戸時代のそばつゆは、現代の三倍濃縮のやつを原液のまま入れたくらいの濃さなので、お蕎麦全部つゆに浸したら、辛くて食べられません。
下1/3くらいを浸してするするっと食べるのが正解だそうです。
蕎麦屋さんのシーンのたびに、出演者の食べ方が気になって仕方がない…。
それから、やたら若い、どう見ても20代前半の番頭さんが出てきたけど、あんなに若い番頭さんいないから!
せいぜい手代でしょう~。番頭さんって言ったら、どんなに順調に出世しても30代後半です。
他にもいろいろ気になるとこがありますが、ここで書くとキリがないのでやめておきます。
というか、
杉浦さんを天国から呼び戻して、もう一度時代考証し直して欲しいです。
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