ドラマの予告でちらりと見たこのタイトルを、例のごとく
図書館の返却棚で見つけて借りたのがきっかけです。
壇れいさん主演のこのドラマ。気になりつつも結局見てなかったけど、ネットの記事で「女版古畑」とか書かれてたなぁ~。
ということはコロンボ式のミステリー(叙述式)ってことか?
…くらいの認識しかなく、著者も全然知らなかったわけでw
叙述式のミステリーといえば、やっぱり
コロンボや古畑任三郎が有名ですね。
※叙述式の本来の意味は、文章の見せ方で読者を騙すということなので、別に犯人が最初から分かる形式を現わすわけじゃないです。念のため。ちなみに最初の叙述式ミステリーはアガサ・クリスティのアクロイド殺人事件かな…。コロンボの方は余り見てなかったのですが、和製コロンボと言われた古畑の方は第1シーズンから最後の話まで、ほぼ全部タイムリーに網羅しました。
この形式のミステリーは、推理モノのお約束「犯人はお前だ!」的な意外な犯人、意外なトリックで意表をつくことが出来ないので、ストーリー展開やキャラクターの個性で読者(視聴者)を惹き付けなければいけないという、
結構難易度の高いミステリーなんですよね。
この著者はコロンボの大ファンで、こういうミステリーが書きたかった…と、あとがきに書いてありますが、まあその通り、正当派コロンボミステリーという感じになってます。
ということで、内容にも触れていきましょう。
第1話、
最後の一冊福家警部補初登場の舞台は、地方の閉館寸前の図書館。
何とか図書館を残したい館長の天宮祥子は、借金清算の為に図書館を潰したい、オーナーの江波戸宏久を、深夜の図書館内で、事故に見せかけて殺害します。
一見完璧に見えた計画も、偶然の雨天と、館内の空調の故障と、本のことを全然考えない宏久の行動etcがきっかけになって、福家警部補の餌食になってしまう犯人w
身長152cmで童顔で、全然警部補に見えない福家警部補。
しかも現場に入る時は、いつも警察手帳を探してカバンをゴソゴソやってて、見張りの警官に野次馬扱いされちゃうしww
この辺の描写は、第1話からずっとお約束みたいで、どの話にも必ず出てくるようです。
はっきり言って全然切れ者に見えない彼女、犯人も聞き込み先もそんな彼女につい油断してあれこれ話してしまうというのが、このシリーズのポイント。
同じ女刑事でも、乃南アサさんの音道貴子(「凍える牙」etc)や東野圭吾さんの内海薫(原作の方のガリレオシリーズ)とは全然違うタイプの切れ者です。
軽く福家さんの紹介をしたとこで、第2話、
オッカムの剃刀この話の犯人は、何と元警察関係者。5年前まで現役の複顔術(白骨から生前の顔を割り出す作業)を担当していて、現在は大学で講師をしている…という、捜査内容を知りつくした、ある意味最大の強敵、柳田嘉文。
柳田は、ある犯罪について医学部の准教授、池内国雄に脅されていた為、連続強盗の一つを装って深夜彼を殺しますが…。
この犯人、元捜査関係者というだけあって、犯行の手口もその後の対応も、ものすごく用意周到。
予想外のことがいくつか判明しながらも、なかなか尻尾を掴めない福家警部補は、ついに捜査協力と偽って柳田を罠に誘います。
古畑シリーズではよく使われてた「犯人を罠にかけて自供させる」手法。このシリーズでは余り使われなくて、使ったのはこの話のみ。
まあ、これだけ強力な相手じゃあ仕方ないですねぇ~。
ところで、この話において、福家さんの「会った人の顔は一度で覚える」という特技が登場します。
いやぁー、5年前に一度会っただけの柳田さんのことを覚えているなんて、すごい~。
人の顔を覚えるのが苦手な私には神業としか思えないですww
さて、そんなこんなで第3話、
愛情のシナリオ女優小木野マリ子は、同じ役をめぐって最終候補に残っている柿沼恵美を、深夜彼女の自宅で殺害します。
前のオッカムの剃刀に比べると、犯罪もシンプルだし、残された手がかりも分かり易く、福家警部補も、さほど迷うことなく犯人を追いつめるのですが…。
この話のポイントは、タイトル愛情のシナリオ。
タイトルの意味が最後に分かります。それから同時に判明する犯人の隠された殺人動機…。
この話では福家さんの映画&ドラマオタクぶりが判明w
後のシリーズでは、お笑い芸人にも詳しく、劇場の回数券まで持ってる様子が伺えますが、捜査中は睡眠も取らず家にも帰る時間もなさそうなのに、一体いつ見るんだか…。
で、最終話、
月の雫居酒屋みたいなタイトルですが、こちらは日本酒の名前。
地元密着で小規模ながらも味にこだわった酒造りをしている谷元酒造と、味よりも経営を優先する大手酒造、佐藤酒造。
谷元酒造の社長、谷元吉郎は、合併という名目でのっとりを計画していた佐藤酒造の社長、佐藤一成を、自分の酒蔵内に巧妙に招き入れて、事故に見せかけて殺害しますが、冬にしては記録的に暖かかった気候がきっかけで、完全犯罪にほころびが生じて…。
酒蔵が関わる事件といえば、古畑の第3シーズン「灰色の村」を思い出しますねぇ。
あの話は酒蔵内で殺人が起こるわけではなかったから、タイプが違うといえば違うけれど、酒蔵を守る為の殺人という意味では似ているかな?と思ったりして。
あの話の最後で、犯人が
「この酒の味を信じてればよかったのに…」とつぶやきますが、この話もそんなセリフが似合いそうですね。
佐藤酒造の強引なやり方に屈して、谷元酒造との付き合いを切っていた地元の熊本酒店も、味の違いによる顧客離れから、結局やり方を見直すことにしたし…。
殺人事件など起こさなくても、佐藤酒造はじきに自滅してたのでは?
と、この話で判明するのは、福家警部補の酒の強さ。
ウォッカをグラスに何杯も飲んだあと、持ってきた月の雫までどんどん飲んで相手から情報を聞き出し、
「これ以上飲むと酔ってしまいますので」とスタスタ歩いていく福家さん。
おいおい
酔ってしまいますって、あれだけ飲んで酔ってなかったんかい!!!
総括としては、全般的にそれなりに面白かったと思います。
この次のシリーズ「福家警部補の再訪」もしっかり借りて読んじゃったし。
傑作!というほどではないけれど、読み易くて、かといって内容も軽すぎず、他人にも進め易い本だと思います。
とはいえ、読み終わって思うのは、ドラマ化して福家さん=壇れいさんというのはちょっと違うのでは?
福家さん最大の特徴は童顔と身長152cmという、
とても刑事には見えない見た目。
どちらかというと大人っぽい美人な彼女にはちょっと似合わないような…。
芸能人に詳しくないので誰ならいいとかは分かりませんが、もうちょっと雰囲気の近い人にやって欲しかったかなーとは思います。